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気持ちよくサラサラとペン先が進み、力加減で筆跡の強弱も自在に表現できる「プラマン」、「トラディオプラマン」。
その独特な書き味に魅了されたファンは多い。私も宛名書きをする時は、よく手にするペンだ。
この「プラマン」、「トラディオプラマン」を作り出したのはぺんてる製造部門の中でもとりわけ職人気質でこだわりを持っていたという和田氏。これまでにないペンを作るという情熱を傾け、今や世界中で販売されているロングセラーペンを生み出した。

その生みの親である和田氏は残念ながらすでに引退をされている。そこで、今回はそのこだわりを受け継いできた茨城工場 相談役(元生産統括)吉村昇さん、商品戦略部 部長の浅野勝夫さん、そして若手の第二生産技術部の山口英之さん、町田俊一郎さんの4人の方々にお話しをお聞きしてきた。

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ぺんてる茨城工場 相談役(元生産統括)吉村昇さん
 
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商品戦略部 部長の浅野勝夫さん

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茨城工場 第二生産技術部の山口英之さん

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茨城工場 第二生産技術部の町田俊一郎さん


■開発コンセプトは万年筆のペン先をプラスチックで実現させる
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1980年発売以来30年以上のロングセラーを誇る「プラマン」
「プラマン」の歴史はここから始まった


万年筆は、インクの補充や書かずに長い間放置しておくとインクの出が悪くなってしまうなど、使い勝手の上で不便な点がある。
それらを解消し、万年筆の使いやすさをプラスチックのペン先で実現させようというのがそもそものはじまりだった。

開発当時の1970年代はプラスチックのペン先を持つ、いやゆる「プラペン」というものがあった。だが、それはペン先が細い棒状になっており、サインペンより細い字は書けるものの、万年筆の書き味とはほど遠いものだった。


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これがプラペン

■全く新しいペン先構造を開発

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「プラマン」のペン先は、矢印のような平らな形をしている。一見すると、一つのパーツのようだが、実は2つのパーツを巧みに接合させ作り上げている。ペン先の先端を見ると、そこだけ違う色になっているのがわかる。ここがインクを送り出している心臓部、「細杆体(さいかんたい)」だ。素材は樹脂製で出来ている。

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「細杆体」の断面を拡大すると、
細い棒状のものが束ねられているのがわかる


その「細杆体」をさらに拡大すると、断面は細い棒状のものがたくさん束ねられたようになっている。これら一本一本の棒の間にはわずかにすき間があり、そこからインクが流れ出てくる。この「細杆体」は2mmくらいの厚みしかないので、これ単体でペン先とするにはさすがに強度が弱い。そこで、樹脂製の平らなパーツで「細杆体」をコーティングするように覆っている。それを「プラマン」のペン先にあるような矢印型に打ち抜いていく。

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「芯スリ」加工によって「細杆体」が現れてくる

作業はそれでは終わらず、「芯スリ」と言ってペン先の先端、つまり「細杆体」の先を上下左右に研ぎ出していく。
そして、これぞ万年筆という加工としては、その先端に目にも見えないくらいのサイズのスリットを入れる。万年筆のペン先には「切り割り」というスリットがあるが、「プラマン」でもまさにそれを取り入れているのだ。


■様々な書き味が楽しめる

こうして作られた「プラマン」のペン先は、ホルダーと呼ばれる板状のものでちょうどサンドイッチのように挟み込んで固定している。このホルダーを横からみると、上下でその長さが違う。なぜわざわざこうした作りにしているのか。
それは、書く時のペン先のしなりの変化を味わえるようにするためだ。書く時にホルダーの長い方を上にすると、しなり具合がやや硬めになり、逆に短い方を上にすると、大きくしなる。

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上下で長さが違う、ペン先を固定するホルダー

このしなり具合をうまくコントロールすることで、筆跡に強弱を生み出していける。つまり、太い線、細い線を自由に作り出すことができる。プラスチック製のペン先は書き込むほどにペン先がなじみ、だんだんと自分好みの書き味にしていくことも可能だ。

万年筆はペン先を常に正しい向きにしないと書くことができない。
しかし、「プラマン」は向きを自由に変えても書いていける。その意味で「全方位万年筆」とも言える。

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■1993年「トラディオプラマン」が登場

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トラディオプラマン」からキャップに窓ができた。
このペンの最大の特徴でもあるペン先を外からでも見えるようにするため、そしてインク色を識別するためでもある。


初代「プラマン」は、インクが中綿式。それを直液式にしてより長く書け、インクカートリッジ交換も可能にした「トラディオプラマン」が1993年に発売された。

直液式と言うと、気圧の変化を受けやすいというイメージがある。しかし、「トラディオプラマン」では、その心配が全くない。それを支えているのが、キャップ内の気密性。キャップの内側にさらにインナーキャップがあり、気密性を高めている。

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また、グリップの内側に透けて見えているジャバラも一翼を担っている。飛行機に乗った際、気圧が変化してインクタンクの空気が膨張すると必要以上のインクがペン先に送られてしまうことがある。
そんな時に、このジャバラがインクを受けとめる役割をする。ジャバラは細かな板状のパーツがビッシリとならんでおり、たくさんのインクを保持できる構造になっている。このジャバラにはインクの保持力を高めるための表面処理加工も施されている。

初代「プラマン」は発売後、好評を博しボディカラーの違うタイプをはじめ、片側が筆ペン、反対側が「プラマン」という双頭タイプや、さらにはペン先が交換できるものまで発売された。


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現在は生産・販売終了しています

海外でも「プラマン」は好評で各国へ輸出された。この技術を応用し、ペン先を斜めにカットしたカリグラフィー用のプラマンや中近東諸国のアラビア文字用など全世界で181品種もあったという。
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カリグラフィー用プラマン(Italic Fountain 1.3)
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アラビア文字用プラマン(NOON1.0)

土橋の注目したポイント


  • 樹脂それ自体はインクを吸収しないのに、どうして「プラマン」のペン先は書けるのかが不思議だったが、「細杆体」によるものだということを初めて知った。それにしても、これまでにないペン先を開発したぺんてるの独創力はすごい。
  • 当初は、万年筆の書き味をプラスチックで実現させるという目標だったが、これはもはや「プラマン」独自の書き味として全世界のユーザーに親しまれている。



プラマン 」商品詳細ページ
www.pentel.co.jp/products/waterbasedmarkes/plaman/pramanjm20/

「トラディオ・プラマン」商品詳細ページ
http://www.pentel.co.jp/products/ballpointpens/gelink/hybridtechnica/


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