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ショッピングサイトAmazon.co.jpの「Best of 2013 年間ランキング(筆記具)」で1位を獲得したぺんてるのシャープペン「SMASH(スマッシュ)」。

「スマッシュ」は知名度という点で言えば、「ボールぺんてる」や「サインペン」ほど一般的という訳ではない。なのになぜ、数ある筆記具の中で1位をとったのだろうか。

今回は、この「スマッシュ」の魅力に迫ってみたい。



■「グラフ1000」の一般向けシャープペンとして企画された
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1986年の発売ということだから、28年目。つまり、四半世紀のロングセラーということになる。
開発コンセプトは、先行して発売されていた製図用シャープペン「グラフ1000」のスペックのいいとこ取りをした一般向けシャープペンを作るというものだった。一般向けということで、ガシガシとタフに使えるということも開発テーマにあったという。SMASH_03
ちなみに1986年当時、シャープペンと言えばキャラクターものや、100円という低価格のものが続々と出てきた時代。そんな中で1,000円クラスの一般向けシャープペンというのは、かなり異色な存在だった。

もうひとつ、開発当時の裏話としてこんなこともあった。「グラフ1000」開発はぺんてるの熟練開発者が担当していたのに対し、「スマッシュ」開発は、入社してまだ数年の20代のデザイナーと企画担当者だった。究極のプロ向け製図シャープペンとしてすでに評価を得ていた「グラフ1000」の後を追いつけ追い越せと若手が取り組んだのが「スマッシュ」だったのだ。

その意気込みが通じてか、発売された翌年の1987年にはグッドデザイン賞「教育用品部門」の大賞を受賞している。


 
■スマッシュに込められた数々のこだわり
今回、「スマッシュ」を28年前に企画したぺんてるの企画担当者である松崎さんから直接色々なお話しをお伺いした。「スマッシュ」は発売当時から一切マイナーチェンジも行われておらず、当時のままの姿で今も発売されている。発売当初からいかに完成されていたかがわかる。そのこだわりをひとつひとつ見ていきたい。


プロ仕様の「金属チャック」
「スマッシュ」の中に搭載されているシャープペンのメカ機構は「グラフ1000」と同じものが使われている。さながらレース向けのエンジンが搭載されているという乗用車といったイメージだ。
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このメカの特長として「チャック」が金属であるというのがある。「チャック」とは、芯をつかんでカチカチと繰り出す役割をしているパーツだ。シャープペンの心臓部とも言える。低価格のシャープペンだと、この「チャック」がプラスチック製というのもある。「金属チャック」のいいところは、芯を出したまま紙の上で強く押し込んでも芯が引っ込まない。プラスチック製のものだと、芯が引っ込んでしまうことがある。
また、カチカチとノックしたときに「金属チャック」は精密に芯が出ていくが、プラスチック製は芯が出た後に少しだけ芯が引っ込むという動きをすることがある。「金属チャック」には、こうした強さと精密がある。

タフに書ける「口金・グリップ一体化」
シャープペンでは珍しく「口金(くちがね)」と呼ばれるペン先部分とグリップが一つのパーツで出来ている。なぜこのようにしているかと言うと、書いていて「口金」が緩むということが起こらないようにしたという狙いがあった。たしかにシャープペンをずっと書き続けていると「口金」のところが緩んでしまうことがある。ここが緩むと不安定になって書き心地が一気に悪くなる。一般ユーザーがタフに使っても大丈夫なつくりになっている訳だ。
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マットな質感の「グリップ」ベース
この口金と「グリップ」のベース部分を触ると、まるでラバーのようなマットな質感。実はここはラバーではなく、金属製(真鍮)。この独特な質感はマットな焼き付け塗装により作られている。しかもこの塗装は3層塗りをしているというこだわりよう。一番手が触れる部分なので、強固な作りになっている。
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バランスのいい低重心
前軸全体が真鍮製ということにより、ペン先側がやや重い低重心となっている。「グラフ1000」は、口金は真鍮製だが、グリップのベースは軽量なアルミ製。ほんのわずかではあるが、「グラフ1000」よりも「スマッシュ」の方がより低重心になっているのだ。
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主張する「ラバーリブ」
「スマッシュ」のトレードマークとも言えるグリップにある立体的な「ラバーリブ」。「グラフ1000」と比べると、「スマッシュ」の方がラバーが飛び出している。ラバーがタップリと出ていると何がいいのか。それは、滑り止め効果が上がるというのがある。「スマッシュ」は製図のように精密な線を引くというよりも、タフに使ってしっかりと握れることが重要なので、あえてこのような仕様にしてある。
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思わず押したくなる「ノックボタン」
ラバーリブに負けず劣らず、「ノックボタン」も個性的だ。「スマッシュ」のノックボタンはまるでポンプのような蛇腹で覆われている。デザイン意図としては、ボディ全体に一体感を持たせたかったという狙いがあった。コンセプトのタフさを演出するため、デザインはオートバイ等に付いているショックアブソーバをイメージしたという。ノックを押し込むと蛇腹がギュッと縮まる様子は見ていてとても楽しいものがある。 
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遊び心としての「芯硬度表示」
製図シャープペンには必ずある「B」や「HB」といった芯硬度を表示する窓。「スマッシュ」は製図シャープペンではないのだが備わっている。一般向けシャープペンということで開発当初、「芯硬度表示」を入れないということで話は進みそうになっていた。しかし、企画担当者である松崎さんは、ぜひ入れたいと考えた。そこで当時の社長を説得したのだそうだ。
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社長から「なぜ芯硬度表示を入れる必要があるのか?」と尋ねられ、松崎さんは「ユーザーへの遊び心です」と答えたという。たしかに実用上で言えば、一般ユーザーが「B」や「HB」の芯を頻繁に使い分けるということはまずしないだろう。しかし、ここにその表示を用意してあげることでユーザーはこの「スマッシュ」をより楽しんでもらえるはずだと考えた。これは、私個人の意見を言えば、大正解だったと思う。

頑丈な「4mmスリーブ」
今では一般のシャープペンでも見かけるようになった「4mmスリーブ」。スリーブとは、芯が出てくる細いパイプのことだ。4mmは、そもそも製図シャープペン仕様。4mmと長くしている理由は定規にペン先をあてた時にスムーズにするため。1987年当時、一般向けシャープペンのスリーブは2〜3mmだった。そんな中で「スマッシュ」は「4mmスリーブ」を採用した。
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スリーブが長いということは、一方で折れ曲がってしまうというリスクも伴う。その折れについても対策済み。すでに触れたように口金は頑丈な真鍮製。スリーブの接合部がしっかりと固定され、ガシガシ使ってもへこたれない構造になっている。


 
 
■他では味わえない書き心地
一本のシャープペンでこんなにも語りどころがあるというのは、本当に珍しいと思う。実際私も今回の取材ではじめて知る「スマッシュ」のこだわりがいくつかあった。

これら様々なこだわりを私なりにまとめてみると、2つの絶妙なコンビネーションということなると思う。ひとつは焼き付け塗装のベースグリップとラバーリブが織りなす優しいフィット感、個性的なノックボタンの押し心地に代表される、使っていて感じる「心地よさ」。もう一つは、プロ仕様に裏打ちされた数々の作り込み。
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これらは、他のシャープペンにはない、独特なものだと思う。




土橋の気になったポイント
  • 焼き付け塗装&ラバーリブグリップ、蛇腹ノックという心地よい質感。
  • プロ仕様を普段使いで楽しめる。



「SMASH(スマッシュ)」仕様ページ
http://www.pentel.co.jp/products/automaticpencils/smash_2/





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