20150415_main
谷尻さんの作品を見ると、美しいとか格好いいというものを飛び越えて、心を揺さぶられるものがある。
見るものに無条件に感動を提供する建築家の谷尻 誠さん。日本のみならず世界からも注目を集めている人物だ。建築に軸足をおきつつ、活動フィールドはインテリア、CM、プロダクトデザイン、グラフィックデザインなど多岐にわたる。
それらのプロジェクトを生み出す時、谷尻さんの手にはぺんてるの「トラディオ・プラマン」が握られる。「トラディオ・プラマン」でどのように様々なプロジェクトを作り上げていらっしゃるのか、お話をお聞きしてきた。


20150415_02
建築家 谷尻 誠さん

20150415_03
ヘルシンキの「グッゲンハイム ミュージアム」のコンペに参加した作品。
当地は岩の町とも呼ばれており、建物が風景になったらいいのではと考え、この大きな岩による建築物を発想したという。


20150415_04
「広島の小屋」は、自然豊かな緑が広がる場所に建てられた住宅。家の中にいても自然がたっぷりと楽しめる。
外壁をアクリルにすることで透明感のある住宅になっている。同時にそれが柱の代わりの構造体にもなっている。




■もともと建築家を目指していた訳ではなかった
若い頃は、洋服などのファッションに興味があったという谷尻さん。センスのいい人たちを観察してみると、みんないい部屋に住み、そこには素敵な家具が置かれているという共通点があることに気づいた。
そうした中で、イームズに興味を持ち、ご自身でも椅子を買って使うようになった。イームズをさらに掘り下げてみると、彼らは家具や映像に加え建築物も創り出している。ファッションからスタートした谷尻さんの関心は、次第に建築へと移っていった。
20150415_05

建築家として確固たる地位を確立された今も、建築だけに自分の活動フィールドを絞りこみたくないと話す。
あくまでも建築に軸足をおき、色々なことをしていきたいという。谷尻さんにとって興味があるのは、建築という一つの対象というよりも、その周りにある様々なものとの「関係性」なのだ。

20150415_06



谷尻さんの手描きを支える「トラディオ・プラマン」
20150415_08
建築の分野にもデジタル化の波は勢いよく押し寄せている。そんな中でも谷尻さんはプロジェクトの最初の段階に手にするのは、アナログのペン。現在は、これしか使わないというほど愛用しているのが「トラディオ・プラマン」だ。
このペンに行きつくまでには、色々なペンを手にしてきたという。あるとき、打ち合わせをしていた相手の方が気持ちよさそうにペンを走らせていた。そのあまりに気持ちよさそうなペンが気になり、「それいいですね!」と打ち合わせの中で何度も言っていると、「それじゃ、これどうぞ」とくれたのだという。それが「トラディオ・プラマン」との出会いだった。
谷尻さんが「トラディオ・プラマン」で一番気に入っているポイントは、その書き味。筆圧にあわせて応えてくれる独特の書き味がある。軽い筆圧で先端だけで描けば細く、少し力を入れれば、その力を受けとめたペン先がしなって太くも書ける表現の自由さがある。その感触がとても良いという。


20150415_07
価格も 500 円(+税)と手頃なので、人にあげるのにもちょうどよい。
最初の出会いは人からいただいたというものだったが、今では逆に差し上げることも多いという。この書き味を気に入ってもらえるのがうれしいそうだ。それがきっかけにとなり、グッと距離が縮まり仲良くなることも多いという。



■ペン先を削るというユニークな使い方
谷尻さんは「トラディオ・プラマン」で少し変わった使い方をしている。新品の時は芯先が尖っているが、書き込んでいくとだんだんと馴染んでいく。さらに書きつづけていると、もはや細い線が描けなくなってしまう。その状態があまり好きになれなかった。
20150415_09

そこで、鉛筆を削るようにカッターで「トラディオ・プラマン」の芯先をシャーシャーと削る。すると、再び尖った芯先が生まれ出す。
一本を使い切る中で数回にわたって削っていくそうだ。とてもユニークな使い方だ。



■現在に過去が映り出す
この「トラディオ・プラマン」でよく描くノートに「PCM 竹尾のドレスコノートブック」がある。紙は「オニオンスキン」というトレーシングペーパーのような半透明なもの。谷尻さんは、ここにも「トラディオ・プラマン」で描いていく。表に描いたら裏面にも容赦なく描いていく。当然、薄い紙なので裏面に描いたものがすっかり透けて見えてしまう。
20150415_10


これが思考に良いと谷尻さんは言う。
一般のノートは書き続けてページをめくると「現在がどんどん過去になってしまう」。
過去が現在に与える影響は大きいという。この半透明な紙に描いていると、過去に描いたものが透けて見えてくる。しかも、それは左右が反転されている。過去が形を変え違ったものに見えてくる訳だ。
これにより、刺激を受けて新たな発想が生まれることも少なくないという。「トラディオ・プラマン」はインクフローがよく発色もいいので、この透かして使うというのにまさに最適である。
20150415_11
裏面(過去)が表面(現在)に影響を与えるという


20150415_12
谷尻さんのノートを拝見すると、間違って消したという跡が全くない。「間違えもプロセスの一部」と考えている。そもそも、消せるようなペンでは一本の線に重みが生まれない。
「トラディオ・プラマン」は消せないので、考え抜いたことを描くという姿勢にさせてくれる、そうした点も谷尻さんの思考スタイルに合っているそうだ。



■思いどおりにならない、思いどおり
谷尻さんが様々な仕事をしていく上で、いつも心にとめていることがある。それは「思いどおりにならない、思いどおり」ということだ。あるとき、自分がこれまでにどんなことに感動をしてきたか振り返ったことがある。
たとえば、映画を見ていて主人公がこうなったらいいのにと思うが、実際のストーリーは全く違う方向に進んでいく。むしろそうした時の方が感動することが多かったのに気づかされた。人は、予測出来てしまうと感動できないということがわかった。
20150415_13

何かをつくる時、ついつい自分の思いどおりにしようとしてしまう。以前は創作活動において思いどおりにしてきたことがあった。しかし、いざそれが出来上がってみる、思ったより面白くなく感動もしなかった。
予測できない、自分の力を超えたところに感動はある。そして、「思いどおりにならない、思いどおり」という境地に至った。
他者のノイズがほどよくあって思いどおりにいかない時の方がむしろ良いのだという。



最後に「トラディオ・プラマン」で今後どんなものを作りたいかとお聞きしてみた。
『「トラディオ・プラマン」は私がこれまで使ってきたペンの中で、一番つきあいの長いペンです。ぜひ、この「トラディオ・プラマン」の新たなモデルを作ってみたいですね。たとえば、今のものより重量感があるタイプであるとか。手にした時に、重いと人はあれ?と、思いどおりにならない意外性から興味を抱いてくれると思うんです。』

20150415_14


土橋が注目したポイント
  • 「トラディオ・プラマン」の芯先をカッターで削るというのは、私自身も初めてお聞きする使い方だった。「トラディオ・プラマン」のペン先はプラスチックの細いパーツを束ねて作られている。インクタンクから毛細管現象によりペン先にインクを送り出しているので、ペン先を少し削ったところでインクの出にはさほど影響がない。あくまでも自己責任とはなるが、書き味を新品にリセットできる面白い使い方だ。
  • 「思いどおりにならない、思いどおり」という考え方はとても興味深いものがあった。私自身を振り返ると、ついつい自分の得意分野に持ちこみ思いどおりにする傾向があった。そこを少し変えてあえて思いどおりにしないという発想をこれからはしてみたいと思う。ただ思いどおりにしないノイズをどこまで喜んで自分が受け入れられるかが大きな課題ではある。

建築家 谷尻 誠さんプロフィール
hp02

1974年広島県生まれ。94年に穴吹デザイン専門学校卒業後、本兼建築設計事務所、HAL建築工房を経て、
2000年にSUPPOSE DESIGN OFFICE設立。共同代表として吉田愛と共に様々なプロジェクトを手がける傍ら、
武蔵野美術大学、昭和女子大学などで非常講師も勤める。住まいのデザインアワード2015 優秀賞など受賞多数。

■谷尻 誠さんツイッター https://twitter.com/tanijirimakoto
■SUPPOSE DESIGN OFFICE 公式ページ
http://www.suppose.jp/index.html


「トラディオ・プラマン」商品詳細
ページ
http://www.pentel.co.jp/products/waterbasedmarkes/plaman/tradiopraman/


人気ブログランキングへ