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*前編はこちら

■ふつうのえのぐとどこが違うのか?
筆などの道具を一切使わず、えのぐを指や手に付けて描いていく「フィンガーペイント」。
その「フィンガーペイント」専用のぺんてる「ゆびえのぐ」。一般のえのぐとは、実は結構ちがうものになっている。

まず使い方からして違う。ふつうのえのぐは、パレットに出して水に溶かして使っていく。
しかし、「ゆびえのぐ」では水は使わない。こどもたちの手のひらや画用紙、ビニール等に「ゆびえのぐ」を出してそのまま描いていく。そして、もうひとつ大きく違うのは描いた時にえのぐの指跡がしっかりと残るようにしてある。
ふつうのえのぐでは、逆に筆跡がのこらないように調整してある。筆で描きたての瞬間は筆跡に凹凸があるが、それは次第に平らになっていく成分配合となっているそうだ。

一方「ゆびえのぐ」では、逆に指跡がしっかり残るようにしてある。そのために配合されているのが「粘土鉱物」という素材。
耳慣れないが、化粧品のクリームなどではよく使われているものだという。主な役割は保持力。「粘土鉱物」の実物を見せて頂いたが、フタを開けてそのまま逆さまにしても中身はじっとしたまま出てこなかった。これこそ「保持力」である。
ちなみに、「ゆびえのぐ」もフタを開けて逆さまにしても中身は出てこなかった。
 
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この容器に入っているものが「粘土鉱物」
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垂れない保持力が特長

しかし、「ゆびえのぐ」の粘り気が強いのかというと、必ずしもそうではないという。
「ゆびえのぐ」を手の平でこねていくと、スルスルとスムーズになる。ちょうど「エナージェル」などのゲルインキの特性によく似ている。リフィルの中では垂れたりせず固まっているが、ひとたび書き出すとインクはなめらかになるという具合に。
たとえるなら「ゲルえのぐ」とでも言おうか。ちなみに開発を担当された黒沢さんは以前「エナージェル」や「スリッチ」などの水性ゲルインキの開発に携わっていた。
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 ■「えのぐ」には「のり」が入っている
「ゆびえのぐ」には顔料をベースに先ほどの「粘土鉱物」、そして「のり」が入っている。
えのぐにのりが?と不思議に思った。実はどんなえのぐにものりは含まれているそうだ。私が怪訝そうにしていると、画材グループマネージャーの植原さんが説明をしてくれた。
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小学校の先生を目指す学生の方々に画材情報を提供する活動も行っている
国内営業本部 マーケティング推進部 画材グループ 植原 克彦さん

「えのぐの色は顔料によるものです。顔料は色の付いた小さな粒。粒だけでは、紙に描いたところで定着しません。それを定着させるのがのりの役目です。砂絵をイメージすると分かりやすいかもしれません。砂だけでは絵は固定できません。描いた後に糊で固定しますよね。それと同じことです。」
 
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これが顔料。色の粒というよりもパウダーのような感じだ。

なるほどそういうことだったのかと合点がいった。

今回の「ゆびえのぐ」には、セネガル種の「アラビアゴム」を使っている。日本でいうところの「あかしや」から出る樹脂だという。
実物を見せて頂いたが、琥珀色でまさにのり色をしていた。
 
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これがセネガル種アラビアゴムの原料

アフリカからこの「アラビアゴム」を取り寄せている。自然のままとれたものなので、虫が入っていたこともあったという。もちろんぺんてるの工場ではそうした不純物は完全に取り除かれる。


■こどもが使うための配慮
こどもが使うということで、誤って口に入れたりしないように対策がとられている。
苦み剤」と言われるものを配合している。こどもが万が一口に入れても外に出させるためだ。開発スタッフの鎌田さんは、苦み剤を検討する際、実際に口に入れて確認したという。
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「苦み剤」を実際に味見したという鎌田さん

■カラー展開にもこだわりが
「ゆびえのぐ」は全8色。このカラー展開の設定では、幼稚園、保育園をはじめ多くの現場の先生の声が活かされている。
たとえば、現場であまり必要のない色として「ペールオレンジ」、「緑」という声があったという。「緑」があまり使われないとは少々意外だった。最近のこどもたちは「緑」より明るめの「黄緑」のほうを好むそうだ。

一方ぜひ入れて欲しいと要望の多かったのは「ももいろ」と「むらさき」。こどもたちにとっての人気色だという。
アニメのキャラクターにもよく使われているものなのだとか。開発の鎌田さんはその点も考慮して、その2色の色あいを最後までこだわったそうだ。
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こどもたちに人気だという「ももいろ」と「むらさき」


■私も使ってみました!
せっかくなので体験してみてくださいと促され、腕まくりをして私もやってみることにした。
てっきり紙の上に描いていくのかと思ったら、ビニールシートが机の上に広げられた。紙でも描けないことはないが、ビニールのほうが「ゆびえのぐ」の良さが実感できるのだという。
紙だと一度描いたら終わりだが、ビニールシートであれば、えのぐは固定されず何度も混ぜて描き続けられる。

鎌田さんに手でお皿を作ってくださいと言われ、幼稚園児のように「ゆびえのぐ」を手の平に載せてもらった。
赤いマヨネーズみたいだ。それを両手でこねて混ぜ合わせる。これまで体験したことのないグニャグニャとした独特な感触が手の平に広がる。不思議な感触だが、段々気持ちよくなってくる
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大人になってからは味わったことのない不思議な感触

その手をビニールシートの上に載せて動かしていく。これは描くというよりも「えのぐ」というもので遊んでいる感覚に近い。凝り固まった私の脳や体が次第にほぐれていった。結構盛大に手を動かしても「ゆびえのぐ」は飛び散らない。
なるほど、これが「粘土鉱物」そして「のり」のおかげなのだと肌で感じた。

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えのぐ特有のニオイはほとんど感じなかった。指先を鼻に近づけるとかすかに感じられる程度だった。
途中に別な色も出してもらい混ぜていった。えのぐを混ぜることは筆でやったことはあるはずなのに、自分の手で行うとまた違った印象になる。自分で色を作っている印象が強くなる。これも「ゆびえのぐ」ならではだ。

描き方は自由だが、ベタッと色を塗りたくってその上に爪の先で描くとキレイな線になる。描いたものは魚拓みたいに上から紙をのせて転写させることもできる。これはこどもたちが夢中になるだろうと思った。

まさしく描く原点だと思った。

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このように指先で絵を描くことができる
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ゆびで描いたところに紙をかぶせると・・・
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作品の出来上がり
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たっぷり遊んでえのぐだらけになった手は、水道水だけでほとんど洗い落とせた。
土橋が注目したポイント
  • 実際に自分の手で「ゆびえのぐ」で描くという体験はかなりインパクトがあった。こどもが使うために配慮がなされているが、ストレスフルなご時世、むしろ大人こそやってみる価値があると思った。いつもと違う脳を使っているのが感じられた。
     
  • 日頃から何かしらアウトプットが求められる。大人に限らずこどもたちもそうだ。たとえば、絵を描く時に親の絵を描きましょうということなどがある。この「ゆびえのぐ」はそれを求められないのがいい。「ゆびえのぐ」と戯れているうちに何かの拍子に作品や表現が生まれ出す。これはとてもいい経験になる。