
≪前編はこちら
■鉛筆・シャープペンをメインに使う制作スタイル
【画像はクリックすると拡大表示できます】

肉体的・精神的理由から25年の漫画家キャリアをいったん終了させた窪之内さん。次になにをやるということも当初全く考えていなかったという。ただ描くということは日々続けていた。ご本人いわく「落書き」と呼び、ちょうど筋トレのような位置づけで行っていたという。描くというのは、筋肉と同じで全くやめてしまうと、しだいに衰えていってしまうものだそうだ。
子供の頃から自分のためではなく、人のために描き、それを見せて喜ばれるのを最大の原動力にしていた窪之内さん。この時も人に見せることは続けていた。使ったのはツイッター。発信をし始めると徐々にフォロワーが増えていった。
ダイレクトにユーザーからリアクションがあるという感触はこれまで味わったことのないものだった。漫画を描いていた時は、自分と読者の間に編集者や出版社がいた。いくら作品がヒットしてもあまり実感はなかったという。
しかし、ツイッターはダイレクトにユーザーの反応が返ってくる。よいことも、そうでないことも含め、そうしたことが窪之内さんにはとても新鮮だった。ツイッターでの発信を通じ次第に企業からもコンタクトがあり、CDジャケットやキャラクターを描いて欲しいという仕事も入ってくるようになった。

そのイラストレーション制作で窪之内さんが主に使っているのは、黒鉛芯系の筆記具だ。具体的には鉛筆とシャープペン。窪之内さんはもともとシャープペンをよく手にしていた。ただ唯一の不満点は、芯先が常に鋭角なところ。そのため描こうとした線とは違う、「誤差」が生まれやすいという。その「誤差」が比較的出にくいのが鉛筆だという。
はじめはキリリと尖らせた芯先は描くほどに削れていき、その削れた角を認識して、クルクルとまわして自分好みの線幅を生み出していく。鉛筆は、描いたときのリアクションが返ってくる最高の筆記具だと窪之内さんは話す。

描いていくと次第に芯先が削れていくが、それさえもコントロールしているという。
愛用しているのは、三菱鉛筆ユニのFだ。Fは「Firm」という意味で、硬度でいうとHBとHの間にあたる。色々な硬度を試した結果、Fが硬すぎずほどよいひっかかりもあって手に馴染んだという。
ハイエンドのハイユニは、すこし滑らかすぎるのであえてユニにしているというこだわりよう。鉛筆で描くと、紙の上で芯がこすられる。
その時、微妙な振動や摩擦が指先に伝わってくる。この振動や摩擦が鉛筆をコントロールする上で重要だと、窪之内さんは強調する。
■鉛筆・シャープペンをメインに使う制作スタイル
【画像はクリックすると拡大表示できます】

肉体的・精神的理由から25年の漫画家キャリアをいったん終了させた窪之内さん。次になにをやるということも当初全く考えていなかったという。ただ描くということは日々続けていた。ご本人いわく「落書き」と呼び、ちょうど筋トレのような位置づけで行っていたという。描くというのは、筋肉と同じで全くやめてしまうと、しだいに衰えていってしまうものだそうだ。
子供の頃から自分のためではなく、人のために描き、それを見せて喜ばれるのを最大の原動力にしていた窪之内さん。この時も人に見せることは続けていた。使ったのはツイッター。発信をし始めると徐々にフォロワーが増えていった。
ダイレクトにユーザーからリアクションがあるという感触はこれまで味わったことのないものだった。漫画を描いていた時は、自分と読者の間に編集者や出版社がいた。いくら作品がヒットしてもあまり実感はなかったという。
しかし、ツイッターはダイレクトにユーザーの反応が返ってくる。よいことも、そうでないことも含め、そうしたことが窪之内さんにはとても新鮮だった。ツイッターでの発信を通じ次第に企業からもコンタクトがあり、CDジャケットやキャラクターを描いて欲しいという仕事も入ってくるようになった。

そのイラストレーション制作で窪之内さんが主に使っているのは、黒鉛芯系の筆記具だ。具体的には鉛筆とシャープペン。窪之内さんはもともとシャープペンをよく手にしていた。ただ唯一の不満点は、芯先が常に鋭角なところ。そのため描こうとした線とは違う、「誤差」が生まれやすいという。その「誤差」が比較的出にくいのが鉛筆だという。
はじめはキリリと尖らせた芯先は描くほどに削れていき、その削れた角を認識して、クルクルとまわして自分好みの線幅を生み出していく。鉛筆は、描いたときのリアクションが返ってくる最高の筆記具だと窪之内さんは話す。

描いていくと次第に芯先が削れていくが、それさえもコントロールしているという。
愛用しているのは、三菱鉛筆ユニのFだ。Fは「Firm」という意味で、硬度でいうとHBとHの間にあたる。色々な硬度を試した結果、Fが硬すぎずほどよいひっかかりもあって手に馴染んだという。
ハイエンドのハイユニは、すこし滑らかすぎるのであえてユニにしているというこだわりよう。鉛筆で描くと、紙の上で芯がこすられる。
その時、微妙な振動や摩擦が指先に伝わってくる。この振動や摩擦が鉛筆をコントロールする上で重要だと、窪之内さんは強調する。

鉛筆はこれに行き着いたという三菱鉛筆「ユニ」のF
「道路が凍ってしまったアイスバーンだと、運転していてもツルツルしてうまくハンドルコントロールできない。しかし、凸凹した道路なら自分で曲がりたいところでハンドルを切れる。書く時も全く同じなんです」
イラストレーションを描く際、メインには鉛筆を多用するが、細かな仕上げにはシャープペンを手にする。以前は0.3mmシャープペンを使っていた。しかし、描いていて芯が折れやすくストレスを感じるものだった。そんな時、行きつけの文具店で「オレンズ 0.2mm」というPOPが目に入ってきた。0.3mmより細いシャープペンがあるのかと驚いて思わず二度見してしまったほどだという。

愛用の「オレンズ」はレギュラータイプのグリーン 0.2mm。
メタルグリップも試したが、このレギュラータイプの方がコントロールしやすいという。
当初、「オレンズ」の使い方を勘違いしてカチカチと芯を出して書いていた。当然芯は折れてしまった。改めて取説を読んで、芯を出さずに書くことを知り、再度試してみると、これがすごくよかったという。人物のまつ毛や口もとや髪のぼかしといったところをこまかく描きこむことができた。
以前使っていた0.3mmシャープペンとは違い、芯の折れも気にせず自分が思い描いた描線を生み出せる心地良さがあったという。

普段、こんな感じで描いているんですと、ライブドローイングを見せてくれた。
鉛筆をやさしく持ち、ササッと摩擦を楽しむかのように顔の輪郭を描き、耳の位置を決めていく。そしておおよその目と口のあたりが描きこまれる。髪の毛も描いたところで「オレンズ」0.2mmに持ちかえて目に細かくペンを入れていく。
ペンを入れると言っても、そんなにたくさんは描いていない。鉛筆の時よりもさらにやさしい筆圧でそっと描きこんでいく。はたからはペンを入れているのか、それともペン先からでる魔法の何かをふりかけているのかというくらいな繊細なタッチだった。するとあっという間に生き生きとした女性が描き上がっていた。

「オレンズ」で繊細な線を描く際は、こうして左手で添えることもあるという。
それくらい繊細なタッチが求められる。

消しゴムは極細のトンボ鉛筆「モノゼロ」を愛用している。
細く描いたものを修正するのに最適だという。

取材の際に2〜3分ほどで描いて頂いたイラストレーション。
人物を描く時は、目に最もこだわるという窪之内さん。
目は肌と違い濡れていて、微妙な光の反射もある。
描きすぎない「間引き」を多用するのが窪之内さんスタイル。

一枚の絵は、色を塗らないバストアップなら15分〜20分程度で描いてしまうという。

彩色がある全身だと3日間はかかるそうだ。彩色では特に肌色の表現に気を使う。
■窪之内さんは鉛筆やシャープペンの良さをこう語ってくれた。
「黒鉛芯で書くと、淡い線になるんです。ソフトフォーカスのような表現も可能になります。光があたっているところは軽い筆圧で描くと、他のところとは違う表現になります。たとえば、女性のスカートを描く時に、手前はしっかり描きますが、後側は淡く描いて遠近感を出します。コンマ数ミリという微妙な線ひとつで絵の雰囲気はまるで違ってきます。そうしたことがオレンズでは表現できるんです」

スカートの後ろ側は、より淡いタッチの線で描かれている
0.2mmというこれまで使ったことのない「オレンズ」との出会いにより、窪之内さんの繊細な表現の幅はさらに広がったという。
■紙で表現が変わる
現在、窪之内さんはイラストレーション制作用にB5サイズのコピー用紙を使っている。漫画を描く紙と言えば、ケント紙が一般的だ。
窪之内さんはそのケント紙が大の苦手だった。それはまるでアイスバーンの道路のようにツルツルでペンのコントロールがしにくいものだった。そのため、ついつい筆圧が強くなってしまっていた。
ケント紙を使っていた頃は、人差し指と中指の間がすっかり腫れてしまい、ついにはしびれも出るようになってしまった。

ノートに描かれたイラストレーションなにかいい紙はないかと探している中で気になるものがあった。それはふつうのノートだった。
一般的には「ネーム用(マンガの絵コンテ)」に使われているふつうのノートにシャープペンで描いていた。その絵の出来映えがご本人でもわかるくらいとても良いものだったという。紙ひとつで絵の表現がこんなに変わるものかと驚いたという。ノートに使われている紙はなんだろうと調べてみると、コピー用紙とほぼ同じものだった。

以来、コピー用紙を愛用している。窪之内さん好みのほどよい凹凸感もあり、振動や摩擦もしっかり感じられる。
実は、漫画を描いていた後半の「チェリー」あたりはケント紙ではなく、コピー用紙にピグマのミリペンで描いていたそうだ。
サイズは少し小さめのB5サイズ。これは色塗りをキレイに仕上げるためだ。彩色にはファーバーカステルの油性色鉛筆とコピックを使っている。特にコピックは広い面を塗るとどうしてもムラがでてしまうので、小さめの紙に小さく描くようにしているのだという。
■アナログ筆記具を使い続ける理由窪之内さんは、今も鉛筆やシャープペン、色鉛筆、マーカーなどのアナログ筆記具だけで作品を作り上げている。
一度だけ、ペンタブというデジタルペンを試してみたことがあった。書き味はツルツルとしていて好みではなく、微妙に描いてから表示されるまでのタイムラグもあって、ストレスを感じるものだった。

道具の進化が表現の幅を広げると語る
デジタルツールで描かないと決心した決定的な出来事があった。デジタルツールがすっかり身の回りに普及し、絵を描く人の間にも徐々に浸透していた時期だった。実際、デジタルツールを使って作品を発表する人も徐々に増えていた。
姪御さんがそうしたデジタルツールで描かれた作品集を見ていて、一言こう言ったのだという。
「全部一緒だね」
デジタルツールは便利なところは確かに多いが、人はそこに甘えてしまう。そうすると極論は記号の集合体のようなものになってしまう。
アナログツールの良さは、コントロールできるということもあるが、もう一方で描いてみたら思っていたのとは違うものになる「偶然性」というのもある。窪之内さんは自分にしか描けないものを作り続けたいという。
最後に、窪之内さんにとってペンとはどんな存在かをお尋ねした。
「パートナーです。自分の作品を創るためになくてはならないものです。そのペンがどんどん進化してくれるのが、表現するものにとってとてもうれしいことです。『オレンズ』0.2mmという折れにくいシャープペンが出てきたことで確実に私のできることが増えました。欲を言えば、さらに細い線も描きたいので0.1mmシャープペンも作ってもらえたらうれしいですね。そして、それを消す細く尖った消しゴム。さらにはその消しカスを掃除する電動のクリーナーもぜひ作ってもらいたいです」

土橋が注目したポイント
- 窪之内さんが話してくれた、書く時の「振動と摩擦」。この言葉はとても印象的だった。私たちがよく「書き味」と言っているが、それを分解すると実はこの2つの言葉に集約されるのかもしれない。ペンを紙の上で走らせた時に指先に感じるわずかな振動と摩擦。ペン先と紙、そして人間によって織りなされる味なのだと思う。
- *窪之内さんのイラストレーションを見て感じるのは、描きすぎていないのに生き生きとした人物がそこに存在しているということ。ご本人は「描きすぎない間引き」と言われていた。描きすぎないことで、見ている私たちが想像できる余地を残してくれているのだろう。そして、目や口元など人物の個性を決めるこまかな部分の仕上げに「オレンズ」0.2mmを使うというスタイル。窪之内さんにとって「オレンズ」は筆記具であると同時に、女性を美しくするメイクアップツールでもあるようにも感じた。
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プロフィール

窪之内英策(くぼのうちえいさく)
漫画家。1966年、高知県生まれ。家具メーカー勤務の後、「OKAPPIKI EIJI」でデビュー。代表作に「ツルモク独身寮」、「ショコラ」(共に小学館)等がある。
■公式Twitter : https://twitter.com/eisakusaku/
■アーティストプロフィール : http://tsukurunomori.jp/bf/produce_management/kubonouchi_eisaku.html

窪之内英策(くぼのうちえいさく)
漫画家。1966年、高知県生まれ。家具メーカー勤務の後、「OKAPPIKI EIJI」でデビュー。代表作に「ツルモク独身寮」、「ショコラ」(共に小学館)等がある。
■公式Twitter : https://twitter.com/eisakusaku/
■アーティストプロフィール : http://tsukurunomori.jp/bf/produce_management/kubonouchi_eisaku.html
「オレンズ」商品詳細ページ
http://www.pentel.co.jp/products/automaticpencils/orenz/

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