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日本の100円クラスのペンの書き味は世界的に見てもトップクラスであると私は考えている。その書き味をもう少し上質なボディで楽しめたら・・・そうかねがね思っていた。それがこのたび実現した。
文房具専門店の株式会社伊東屋とぺんてる株式会社初のコラボレーションにより誕生した「ITOYA 110 ペンジャケットシリーズ」。
今回は、このコラボペンの開発背景や開発苦労話、さらには私土橋による書き味インプレッションをお届けしたい。


■ペンジャケットとは?
ペンジャケット」という言葉をはじめてお聞きになる方も多いと思う。通常はリフィルをボディで覆うものだが、今回のものは、リフィルではなくペンそのものをベースにして、それを新たなボディである「ペンジャケット」で包み込んでいるのだ。

ベースとなるペンは3種類。ぺんてるを代表するロングセラーペン「ぺんてるサインペン」、「ボールぺんてる」、「プラマン」だ。
これらのペンは長さも違えば太さもそれぞれ違う。にも関わらず1本のペンジャケットに収まってしまうのだ。


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2016年9月12日銀座・伊東屋「G.itoya」HandShake Loungeにて開催された発表会
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左から「ITOYA 110 ペンジャケットシリーズ for サインペン」、「ITOYA 110 ペンジャケットシリーズ for ボールぺんてる」、「ITOYA 110 ペンジャケットシリーズ for プラマン」。各5,000円+Tax。それぞれのペン(黒インク)が1本標準セットされる販売仕様だ。

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カラーバリエーションはブラック・ネイビー・ホワイト・レッドの4色


■伊東屋からのオファーで開発がスタート
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株式会社伊東屋 代表取締役社長 伊藤 明氏

今回の両社のコラボのきっかけについて、株式会社伊東屋 代表取締役社長 伊藤 明氏はこう話す。
『ぺんてるサインペン』、『ボールぺんてる』、『プラマン』はいずれも書き味がよく大変に売れているペンです。ただ、一方であまり にも人気があり、様々な場所で買うことができます。そのためわざわざ伊東屋で買わなくても済んでしまいます。そこで私たちが注目したのは、ペンが使われるシーンでした。具体的には、ペンを使っているところが他の人から注目されるオフィシャルな場面です。どんなペンを持っているかで、その人の人となりが現れるものです。この3本はこうしたシーンで使われる可能性は十分にあると考えました。この3本で特別なものが作れないだろうかと思い、ぺんてるさんにオファーしました」

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ぺんてる株式会社 代表取締役社長 和田 優氏

ぺんてる株式会社 代表取締役社長 和田 優氏は、今回の3本のペンは、ぺんてるのこだわりを最も象徴したペンだと語る。
「当社では商品づくりにおいて3つのこだわり持っています。①『先っぽ』の技術。②『色』。③『どこでも、だれにも使いやすく』です。①の『先っぽ』とは、ペン先技術のことです。『色』というのは、長年ぺんてるが画材を作ってきたメーカーであり、色に対し並々ならぬこだわりがあること。③の『どこでも、だれにでも使いやすく』は気軽に使える商品を作り、すべてのユーザーに表現する機会を提供するということです。特に今回コラボで使われている3本のペンはいずれも『先っぽ』の技術にとことんこだわったものです」


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ぺんてる株式会社 常務取締役 耒谷 元氏

ぺんてる株式会社 常務取締役 耒谷 元氏によると、国内で販売している「ぺんてるサインペン」の中で一番売れている色は、意外にも赤だという。先生御用達の採点ペンとして広く使われているという理由からだ。その意味では確固たるポジションを確立している。
ただ、この「ぺんてるサインペン」をはじめ、「ボールぺんてる」や「プラマン」について、市場変化やユーザーニーズに対し、もっと違う用途でも使ってもらうべきなのではないか?という課題も抱えていたという。

こうした両者の思いがうまい具合に重なり誕生したのが、今回の「ITOYA 110 ペンジャケットシリーズ」だったのだ。


■困難を極めた開発
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伊東屋のオリジナル商品企画を手がける伊東屋研究所 兼 株式会社伊東屋企画開発本部 橋本 陽夫氏
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ぺんてるのペン・マーカー・筆ペンの開発を手がける ぺんてる株式会社 商品開発本部の鈴木 慎也氏

ベースとなるペンを包み込むという構造上、どうしても軸は太くなりがちだ。デザインを担当した伊東屋研究所の橋本氏は、できるだけスリムさを維持するようぎりぎりのデザインを行ったという。
それをもとに技術面のあらゆる点をクリアしたのが、ぺんてる株式会社 商品開発本部の鈴木氏だ。「ペンジャケット」のボディは重量感のある真ちゅう製。ただ、その肉厚をできるだけ薄くするなどして、徹底してスリム化を計っている。

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 改良を重ねたデザイン案
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真ちゅう製ボディは、このように薄く仕上げられている

また、長さと太さの違う3種類のペンを同じ「ペンジャケット」に収めて快適に書けるようにするための工夫が2つ施されている。
ひとつは、後軸の内部にあるバネだ。長さが違うペンでも「ペンジャケット」の中でしっかり固定できるようにしている。
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後軸の内側奥にはバネがある。これで長さが違うペンを固定している。

ただ、それでもペンの長さの違いを「ペンジャケット」だけで解消することはできなかった。そこで「ペンジャケット」の先軸と後軸をつなげるリングを用意し、それぞれのペン専用のものにした。それが「調整リング」である。この「調整リング」は3種類のペンそれぞれに長さが違っている。

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3種類の「調整リング」

つまり、この「調整リング」があることで、長さも形も異なる3本を1本のペンジャケットに収めることができるのだ。
実は「調整リング」以外のパーツは全て共通のものが使われている。はじめに「ITOYA 110 ペンジャケットシリーズ for サインペン」を買って、次に「ボールぺんてる」をセットしたければ、別売りのボールぺんてる用の「調整リング」とボールぺんてるを買い足せばOKという訳だ。(別売り調整リングは各サイズとも300円+Tax)

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このようにサインペン単体をジャケットにセットしていく
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調整リングだけを替えることで「ボールぺんてる」もセットできる
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「プラマン」もセット可能
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調整リングはねじ込み式で着脱可能

また、「空気穴」という点でも苦労があったとぺんてる鈴木氏は話す。今回の3種類のペンは、もともとリフィルの交換ができない使い切りタイプである。そのため、ボディの内部は基本的に密閉されている。書いてペン先からインクが出たら、その分だけ空気を内部に取り込まなくてはならない。それを行うのが「空気穴」。いずれのペンにもペン先のサイドに小さな穴がある。この「空気穴」の位置は3種類のペンごとに微妙に違う。それを同じ「ペンジャケット」で包みこんでも、ペン単体の時と同じなめらかなインクフロー、そして書き味を維持することができている。
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微妙に位置が違う「空気穴」
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先軸から出ているペンの長さはそれぞれわずかに違うが、ぐらつきはなく見事にフィットしている

土橋が注目したポイント
  • 1本100〜150円のペンに「ペンジャケット」をセットすることで一挙に価格が5,000円となる。高いという印象を持つ方もいらっしゃるかもしれない。伊東屋の伊藤社長は「人はリフィルから考えてペンを買う訳ではない」と話されていたのが、とても印象的だった。たしかに書き味を決めるリフィルは大切な要素だが、リフィルも含めたペン全体の世界観を見て、私自身も普段ペンを選んで買っている。その意味で、今回の「ITOYA 110 ペンジャケットシリーズ」は、誰にとっても馴染みのあるぺんてるの3本を、プレミアムな1本に仕上げ、新しい世界観のペンにバージョンアップさせている。普遍的な価値を保ったまま、スーツ姿にもしっくりとくるフォーマルなシーンで使える1本になる。ビジネスシーンで大いに活躍してくれそうだ。