株式会社伊東屋とぺんてる株式会社、初のコラボペン「ITOYA 110 ペンジャケットシリーズ」。後編では、その使い心地をご紹介していこう。
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■バランスのとれたデザイン

「ペンジャケット」に「ぺんてるサインペン」、「ボールぺんてる」、「プラマン」をセットした3本を並べてみると、長さは微妙に違っている。しかし、いずれもいいバランスだ。それをうまく吸収してくれているのが「調整リング」の存在なのだろう。当初、この「調整リング」はシルバーで企画が進められていたが、最終的に伊東屋研究所 橋本陽夫氏の意見でブラックに変更された。もし、シルバーのままなら「調整リング」が必要以上に目立ってしまったように思う。
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当初は、このモックアップのように「調整リング」はシルバーでデザインされていた

また、この「調整リング」は長さだけでなく、デザイン面でもスリットを入れるなど変化がある。一番短い「ぺんてるサインペン」はスリットがなく、一つのブロックに。2番目に短い「ボールぺんてる」の「調整リング」にはスリットを1本、最も長い「プラマン」にはスリットが2本。並べて比較してみるとわかるが、スリット効果により「調整リング」が「ボールぺんてる」では2つ、「プラマン」では3つ重ねられているように見え、そこにリズム感が生みだされている。
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この「調整リング」を見分けることで、
キャップを締めたままでもどのペンであるかがわかる


■見た目と違う印象

手にすると、まず感じるのが見た目ほど重くないということだ。たしかに真ちゅうを使っているので、ほどよい重みはある。堂々とした重厚感ほどではない。
さらに意外だったのは、握った時の感触だ。ペンを包み込む「ペンジャケット」をまとっているという認識が私にはあり、「太い」と思い込んでいた。しかし、握った時の印象はいたって自然であった。私がふだんから太軸の万年筆をよく使っているせいなのかも知れないが、太さというものはほとんど気にならなかった。
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私が普段愛用している万年筆(ペリカンM800)と比べても
わずかに太いくらいだ

ネイビー、ホワイト、レッドはツヤツヤとした表面加工であるのに対し、ブラックだけはラバーを思わせるマットな質感。これはラバーではなく、真ちゅうボディの表面に特殊な塗料を塗布しているのだそうだ。このブラックだけは、吸い付くような握り心地がある。
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■ぺんてるクオリティのキャップ嵌合(かんごう)

キャップは引っ張って外すタイプ。スピーディな筆記を可能とする仕様だ。このキャップの開け閉めが気持ちよい。カチッといい音がし、その感触も確かさが感じられる。ぺんてるでは、このカチッと開け閉めする嵌合(かんごう)に永年大変なこだわりを持っている。
キャップ内部の気密性を高めるのはもちろんのこと、キャップを開けた、閉めたということが直感的にわかるようになっているのだ。今回のキャップにも、そのぺんてるのこだわりが息づいていた。
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■万年筆ライクな書き心地

外したキャップは、どうやら後ろにささない方がよいようだ。その方がライティングポジションをとった時のバランスが決まりやすい。そもそも「ペンジャケット」のボディは少々長めなので、キャップをささずとも十分快適に握れる。
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適度な「ペンジャケット」の重みを味方につけて紙の上にペン先を走らせてみる。手の力をいつもより20%ほど抜いて楽に書いてみる。
「ぺんてるサインペン」、「ボールぺんてる」、「プラマン」ともに、書き味が明らかに違う。書き味というものは、ペンのリフィルだけが決めるのではなく、手にした時の感触、重さ、さらにはペンの見た目も大きく影響してくる。それらを総合的に感じて私たちは書き味として認識している。その総合力がいつものペン単体の時とは違っているのだ。
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「ITOYA 110 ペンジャケットシリーズ for サインペン」は、
筆タッチサインペン」を入れて楽しむこともできる

どのタイプを使ってみたいかと聞かれたら、私は「プラマン」のブラックをあげたい。
いつもの「プラマン」の時よりも握る位置は少しペンの中央よりに、ペンを寝かせぎみにして書いていくのが私流。こうすると心地よさが倍増する。
考えてみると、この書き方は私がふだん万年筆で書いているライティングポジションと同じだ。
「プラマン」はプラスチックのペン先で楽しめる万年筆スタイルのペンだが、「ペンジャケット」によってその万年筆度は高まってくる。
土橋が注目したポイント
  • かねてよりぺんてるの水性インクペンの書き味を少し重いボディで楽しみたいと夢見ていた。それが実現した。しかも、すばらしいデザインで。今回の「ITOYA 110 ペンジャケットシリーズ」で一番感じたのは全体を貫く一体感。スキのない作り込み、そしてデザインだった。洋服でもそうだが、専用に誂えたジャケットというのはやはり心地よいものなのだということがよくわかった。