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Facebook、ツイッターなどのSNSを駆使し、幅広いユーザーに文房具の魅力を伝える文具ウェブマガジン毎日、文房具。。その編集長として活躍されている髙橋拓也さん。私自身、文具イベントなどで数年前からご一緒することがあり交流させていただいている。
髙橋さんは、自他とも認める筋金入りの「エナージェル」愛用者。いや、愛用者という言葉ではちょっと言い足りないかもしれない。
「エナージェル」は、もはや髙橋さんの一部と言ってもいいのかもしれない。

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文具ウェブマガジン「毎日、文房具。」編集長 髙橋拓也(たかたく)さん

前編では、髙橋さんが立ち上げた「毎日、文房具。」について、後編では「エナージェル」の溺愛ぶりについて対談形式でお伝えしたい。

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取材は、文具に関する情報発信者同士ということで非常に話がはずんだ

土橋「髙橋さんとはこれまで様々な文具イベントで何度もご一緒してきました。ついこの間も台湾に行きましたね。考えてみますと、改めて『毎日、文房具。』についてお聞きする機会がなかったように思います。まずは、立ち上げのいきさつからお願いします。」

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文具ウェブマガジン「毎日、文房具。

髙橋もともとは社会人一年目から個人でブログをやっていました。文具を中心にレザーアイテム、雑貨などを紹介しているブログでした。ただあくまでも趣味的な意味合いが強く、アクセスはそれほどありませんでした。そんな中、TwitterやFacebook等のソーシャルメディアが登場してきました。元来、新しいものに敏感なタチなので、すぐにはじめてみたところ、その可能性の大きさを実感しました。個人が情報発信するのにとても優れたツールであると。手始めにFacebookページで『No Stationery, No Life.』というファンページを立ち上げ、文具情報をより積極的に発信しはじめました。しばらくして、現在『毎日、文房具。』の副編集長として一緒に活動している福島がTwitterを通じてコンタクトをしてくれたんです。彼女は当時、編集・ライターの仕事をしていました。彼女はもともと文具が好きで、今後は自分の得意なことを活かして仕事をしてみたいと考えていたそうです。私の活動に大変興味があったようで、詳しく聞きたいということで会うことになりました。」
 
土橋「髙橋さんにとってのSNSは人と出会うきっかけとなっているんですね。」

髙橋「そうなんです。会って話してみると、お互いにやってみたいことが一致していました。と同時にお互いの得意分野も違っていました。私は文房具のことは好きですが、ウェブのことはあまり知識がありませんでした。一方、福島の方はウェブを自分で作ることができるんです。お互いに強みがそれぞれにあることがわかり、初めて会ったその場で一緒にやっていこうと決まったんです。彼女のアドバイスでウェブサイトをプラットフォームにして、SNSはその情報拡散ツールにしていくことにしました。私がニーモシネのパッドに『エナージェル』でこんなウェブサイトにしようというアイデアを書いていきました。それをもとに福島がウェブサイトに仕上げてくれました。はじめて会ってから1ヶ月ほどでウェブサイトは立ち上がりました。2014年9月のことです。

土橋「運命的な出会いだったんですね。しかもすごいスピード感。文具のイベントで『毎日、文房具。』というウェブマガジンをスタートしたというお話を聞いた時、毎日更新するなんてすごいなと思いました。」

髙橋「よく勘違いされるんですけど(笑)、『毎日』は毎日更新という意味ではなく、『毎日の生活に欠かせない文房具の魅力を伝える』ということなんです。」


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土橋「『毎日、文房具。』の活動内容は?」 

髙橋「ウェブサイトで自分たちがよいと思った文具を紹介する他、『マイナビニュース シゴトチャンネル』などでの連載、文具メーカーから依頼を受けて記事を書く記事広告の掲載、文具メーカー・小売店とのコラボ、売り場作りのお手伝いなどを行っています。」

土橋「記事を書かれるライターの方は何名いらっしゃるのですか?」

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髙橋「ライターは私を含めて4名です。うまい具合に男性2名、女性2名というバランスです。加えてサンフランシスコ在住のブルースが、翻訳アドバイザーとして参画しています。私はその中で編集長をしていますが、私の『個』が全面に出ないようにしています。と言いますのも私がパラレルキャリアで『毎日、文房具。』に取り組んでいるからです。つまり、会社員としての立場もあるんです。たとえば。雑誌などに出させてもらう時も私の名前よりも『毎日、文房具。』を全面に出してもらうようにしています。よく『文具ブロガー』に間違われるのですが、私はブロガーという立ち位置では活動していません。あくまでも『メディア』にこだわっています。

土橋「それはなぜでしょう?」

髙橋「ひとつはブロガーの方々との差別化です。実は私個人としてはブロガーの方々には情報量において敵わないとも考えています。例えば、万年筆などにとても詳しいブロガーの方はたくさんいます。私は、そこには到底追いつけません。もし、自分がブロガーというポジションで活動していたら、きっと埋もれてしまったと思います。より目立つ存在になるために、あえて“髙橋”という個性を前に出さずに「ウェブメディア」を打ち出しているんです。また、信頼性を高める狙いもあります。私自身会社に勤めているからわかるのですが、企業がプロモーション等でブロガーという個人に対して直接発注することが難しい場合があります。たとえば社内の稟議も通りにくかったり。メディアとして活動していると、外部からの見え方が違ってきます。」

土橋「なるほど、パラレルキャリアであることが強みになっているんですね。では、メディアとして情報発信をする上でこだわっていることは?」
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髙橋「ユーザー目線です。機能の説明はメーカーリリースを見ればわかります。私たちは『実際の使用感』に重点を置いて紹介するようにしています。

土橋「同感です。私も『使い心地』という点はとても大切だと思っています。文具は使ってみないとわからない。その印象を私の主観ではありますが、表現するようにしています。特に意識しているのは、文具を手にした時の自分の心理描写。その文具を使うと自分の心がどう反応したか、といったことです。また、気になるところがあれば、それも紹介するようにしています。ところで、髙橋さんが文具に興味を持つようになったきっかけは?」

髙橋「中学生時代です。小学生から中学生になると筆記具が鉛筆からシャープペンにかわります。あこがれのシャープペンを使えるようになり色々なものを試しました。私にとって鉛筆は基本どれも同じような書き味なんですが、シャープペンはそれぞれに個性を感じます。自分の気に入ったシャープペンを持つと、それが使いたくて勉強がしたくなるんです。文具にはそうした力があるんだと感じました。大学時代は、ぺんてるの『エルゴノミックス』をよく使っていました。」

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学生時代に愛用していたというぺんてる「エルゴノミックス」シャープペン
(現在は販売されていない)

土橋「ちょっと嫌な仕事でも、気に入った文具を持つことでやる気になれる。私も日々文具のそうした力の恩恵を受けています。そうした文具を買う時にポイントにしていることってありますか?」

髙橋「ネットや雑誌等で積極的に情報収集!というのは意外とやらなくて、直接店頭に行って試してみるのを大切にしています。実は、ほぼ毎週末は妻と買い物に出かけています。私たちのショッピングはちょっと変わっていまして、現地に着いたら待ち合わせの時間だけを決めてあとは自由行動なんです。私は文具店や書店によく行きます。買う時のポイントは機能も大事ですが、見た目や直感も重視します。たとえば、このペンケースは機能からすると完全ではない部分もありますが、とにかくこの見た目が好きでずっと愛用しています。」

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髙橋さんが日頃から愛用しているペンケース

土橋「自分の直感を信じて文具を選ぶというのは私も常にやっています。直感(本能)と理性のせめぎ合いが自分の中でいつもに行われるのですが・・・。私が最近こだわっている文具選びのポイントに『使っていると存在が無になる』というものがあるんです。たとえば、ペンを手にするまではその存在を感じているのですが、いざ手にして書き始めるとペンの存在がすぅっと消えてしまう。そして私の意識は100%考えること、書くことだけに注がれていく。そんな文具を最近は好んで選ぶようにしています。今使っている『グラフ1000』(07mm)などは、まさにそうしたもののひとつです。」
 
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土橋が取材時のメモに愛用している
ぺんてる「グラフ1000」0.7mm

土橋「さて、最近はスマートフォンが普及して、手の平の中でいろんなことができるようになっています。そうした中でも輝き続ける文具のすばらしさとは、どんなところだと思いますか?」

髙橋「私はスマホも使っていますが、スマホ上でスケジュール管理はしていません。紙の手帳を使っています。それぞれには良さがあり、使い分けるようにしています。その上で文具の魅力は3つあると考えています。それが『スピード、温度、広がり』です。『スピードとは、文具はさっと書き出せるということです。スイッチを入れる必要もありません。『温度とは、その時書いた自分のテンションが文具では残せるということです。大事なことはグルグルと強い筆圧で書いておけば、あとで見たときにその重要度がすぐにわかります。『広がりは余白が生かせるということです。私はなにか考えをまとめる時に、あえて紙に余白を作っておきます。そしてすこし時間を置いてから再びその紙に向かい余白に新たな考えを書いていきます。文具はこのように考えを自由に広げていくことができるんです。
 
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土橋
「『温度』という表現はいいですね。私は『感情』とよく言っています。その時の思考のニュアンスが残せるのはアナログ筆記具ならではですね。なかでも黒鉛芯は、筆跡の濃淡を出せる幅が広く、ニュアンスが表現しやすい。また、黒鉛芯で書いた文字はミクロの世界では紙の繊維の上に黒鉛の粒が乗っかっているので、筆跡が立体になっていると私は感じています。『立体』である方が感情が伝わりやすいと思っています。髙橋さんは文具のどんなところが好きですか?」

髙橋私は自分を弱い人間だと思っています。能力のある強い人は文房具に頼らず常に結果を出せます。私はそうではありません。だから文房具に助けてもらっているのです。そして、文房具は誰にとっても身近な存在という点も好きですね。例えば、高級な腕時計なんかだと、好きな人もいるけど、あまり興味のない人もいるので、だれとでも話せる話題ではありません。文房具は誰とでも共通の話題として話すことができるコミュニケーションツールという面があると思います。

土橋文房具に助けてもらうというのは面白い視点ですね。」

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土橋が注目したポイント
  • 私もpen-infoというウェブサイトで髙橋さんと同じ文具をテーマに情報発信しているが、今回髙橋さんのお話をお聞きして、同じような考え方だなと思うことも多い反面、なるほどそういう考え方もあるんだなぁとも感じた。たとえば、個人ではなく「メディア」にこだわるという点。私は一人で全てのことをやっているので、どうしても個人としての自分を打ち出していかざるを得ない。一方、メディアは複数の人によって作られていくもの。今後もあるところは協力して、またあるところでは違いを出して文具というものの素晴らしさを共に伝えていければと思う。


後編では、「エナージェル」を中心にお話をお聞きしていきます。

プロフィール
髙橋拓也(たかたく)
2014年9月に創刊した文房具の魅力を紹介するウェブマガジン「毎日、文房具。」の代表 兼 編集長。文房具が大好きで、ウェブマガジンを通じて文房具の素晴らしさを日本中、世界中に発信することがライフワーク。最近は文房具売り場のプロデュースや文房具メーカーとのコラボ企画の運営など活躍の幅を広げている。
 
■ウェブサイト:http://mai-bun.com


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