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「私の仕事は、登場人物のキャラクターに芝居をつけることなんです」

そう語るのは、アニメーターの羽山淳一さん。
「北斗の拳(1987年)」、「ジョジョの奇妙な冒険(OVA:1993年~1994年、2000年~2002年)」、「ボトムズファインダー(2010年)」などなど、数々のアニメーションの制作現場でご活躍されてきた方だ。きっと多くの方が羽山さんのアニメーションを一度は見て大人になってきたと思う。

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実は、羽山さんは「ぺんてる筆」を使ってアニメーションのキャラクターを描く活動も行っており、作品を集めた個展や作品集の他、キャラクターの描き方とデザインの考え方を解説したレクチャー本も出版されている。
今回、羽山さんに普段の仕事道具、そして「ぺんてる筆」へのこだわりなどをお聞きしてきた。

アニメーターという仕事は、主に「原画」と「動画」を描いていくことが中心となる。「原画」は、絵コンテやレイアウトをもとにキャラクターの動きのポイントやキーポーズを描いていくことだ。「動画」は、「原画」をもとに一つ一つの動きの間を埋めていくための膨大な絵を描いていく作業という具合に分かれている。

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羽山さんのキャリアは、「Gu-Guガンモ(1984年)」の「動画」制作からスタートしたという。およそ1年間の経験を積み、その後すぐ「原画」制作に携わる。わずか1年で「原画」に進むのは、異例のスピードだったそうだ。

もともと羽山さんは、漫画家になりたかったという。ただ、絵を描くことには自信があったが、ストーリーを考えるのは、あまり得意ではなく、漫画家への道を諦めることにした。このとき、アニメーターという絵だけをひたすら描いていく仕事があることを知った。鉛筆だけで仕事をするそのスタイルにトライしてみようと思ったのが現在のキャリアをスタートしたきっかけだった。

その後、20年にわたり数々の名作の制作に携わり、現在も大御所として現場で活躍されている。


■羽山さんの仕事道具は、芯ホルダー

「原画」も「動画」も鉛筆だけで描いていく。当初は、羽山さんも他のアニメーターと同じように鉛筆を使っていた。その鉛筆を2013年から芯ホルダーに持ち替えた。現在、使っているのは北星鉛筆の「大人の鉛筆」。

アニメーター唯一の仕事道具である鉛筆を芯ホルダーに持ち替えるというのは、どんな心境の変化があったのだろうか?

「鉛筆って、削ると短くなるじゃないですか。書く時の握り心地であるとか、何かが変わってしまうんです。それがイヤだなって思って、軸がずっと同じ芯ホルダーにしてみたんです」

羽山さんは2Bの芯を入れて描いている。大人の鉛筆のボディが鉛筆と同じ木軸であるというのも手にしっくりくるそうだ。

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羽山さんが描く原画は、どれも躍動感にあふれている。今にも動き出しそうな息づかいが感じられる。
取材の時も、その場で芯ホルダー1本で活き活きとしたキャラクターをササッと描き上げていただいた。なにも見ることなく、頭の中にたくさんある引き出しの一つを開けるように、一気呵成に描き上げられていた。

その活き活きとした絵の根底にあるのは、羽山さんの人間に対する鋭い観察力だ。日頃から外に出かけた時などに、人の動きをよく見るようにしているという。写真などは撮らず、ただただ頭の中に焼き付けていく。

初期の頃は、人体解剖図といった本や模型で人間の骨格や筋肉のつくりについての基本を学んだが、その後はひたすら実際に人間の動きを観察し続けていったという。

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わずか1〜2分で描き上げられたキャラクター

■「ぺんてる筆」で作り出される羽山さん独自の世界

「ぺんてる筆」を使うのは、仕事として描く時ではなく、あくまでオフの時。

その日の仕事が終わり、リラックスしてお酒(バーボン)を飲んで、ご本人いわくいい感じになってきたら、「ぺんてる筆」を手にとりサラサラと描いていく。仕事では、決められた絵を黙々と描いていく作業。そこには、自分の「好き」をはさみこむ余地は全くない。

一方、「ぺんてる筆」を手にするときは、仕事から完全に離れ、自分の好きな絵を思う存分描いていく。
羽山さんのように筆ペンだけでキャラクターを描く方は、なかなかいない。「ぺんてる筆」で描かれたそうした絵を羽山さんはツイッターで定期的にアップしている。ファンの間ですぐに話題になり、個展や作品集など今やすっかり本格的な活動になってきている。

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躍動感溢れるイラストがタップリ楽しめる羽山さんの作品集
アニメキャラクターの作画&デザインテクニック
羽山淳一 イラスト集 JUNICHI HAYAMA ILLUSTRATION COLLECTION

「ぺんてる筆」を使うようになったきっかけは、15〜16年前にアメリカのコンベンションに行ったときだったという。
そこで色紙に絵を描くことになった。奥様から「ぺんてる筆」で描いたら海外の方にも喜ばれるのでは、というさりげない提案だった。

描いてみると、思いの外しっくりときたそうだ。実は、羽山さんは小学生から中学生まで書道を習っていた。筆を手にすることに抵抗感はなかった。
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羽山さんが「ぺんてる筆」で描いた作品をみると、一本一本の線に勢いがあり、迷いは全く見られない。細い線、太い線、そしてかすれをも巧みに取り入れて描かれている。鉛筆や芯ホルダーの時のように消すことはできないので、間違いは許されない。
一本一本の描線には、そうした緊張感がみなぎっている。

■「ぺんてる筆」にこだわる理由

「最初に買ったのが、偶然ぺんてる筆だったんです。とにかく穂先がいいですね。私は結構力を入れて描くこともあるんですが、それでも穂先がばらけません。ほどよい弾力もあって描きやすいです」
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愛用の筆ペンは、普段から大切にされているようで、レザーのペンケースに入れていた。

以前、描いている途中にインクがなくなって、コンビニ買いに行った際、「ぺんてる筆」がなかったので、しかたなく他社のものを買って使ったことがあったという。しかし、その書き味は全く違っていたという。以来、「ぺんてる筆」だけを愛用している。

羽山さんが一番よく使っているのは中字。細い線、力強い線の両方が一本で描き分けられる点が気に入っているそうだ。

「普段、こんな感じでやっているんです」と実際に描いて頂いた。

慣れた手つきで、「ぺんてる筆」のキャップをカチッと開け、その瞬間羽山さんのスイッチが切り替わったように感じられた。するどい視線で紙の上に描き始めた。
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まず、下書きを「うす墨」で描いていく。目の線を入れ、髪の毛、顔の輪郭がだんだんと紙の上にあらわれてはじめる。
描いているというよりも、紙から絵を浮かび上がらせているような感じだ。

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中字に持ち替えてより濃い線が加わっていく。キャラクターに魂が吹き込まれていくかのように、活き活きとした人物が生まれていく。
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途中、軸をギュッと握ってインクをタップリと出して、穂先を紙に押しつけて太い描線で髪の毛を描いていく。
仕上げとして「朱墨ぺんてる筆(オレンジ)」で目や背景を描き入れ、再びうす墨で要所要所に影を入れていく。
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ものの3分くらいで仕上げられたその絵は、決してたくさんの描線がある訳ではない。むしろ少ないほうだと思う。にも関わらず、キャラクターの表情や、きっとこんな性格なのだろうという内面までも感じられるものになっていた。
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羽山さんにとって「ぺんてる筆」とは、どんな存在ですか?とお聞きしてみた。
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「私が『ぺんてる筆』を手にする時は、リラックスしている時です。私にとって『あそび』のひとときなんです。一枚の絵を描くのに、30分以上はかけないようにしています。それ以上かけると、もはや『あそび』ではなくなってしまうので。あくまでも楽な気分で描くためのものなんです。」
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取材時にもう一点描いてもらったキャラクター(女性教師)
今回登場したキャラクターは全て羽山さんオリジナルのキャラクターだ


■土橋が注目したポイント
  • ご本人はあくまでも「あそび」で描いているとのことだったが、描かれたものはその域をはるかに超える作品だった。無駄な線がそぎ落とされ、基本墨の濃淡だけで描かれている。羽山さんのそうした絵を見ていて、もはやこれは現代版の水墨画に近いものだと感じた。
  • 筆ペンというと、文字を書くものというイメージが強かった。今回の羽山さんのライブドローイングを拝見して、「ぺんてる筆」は描画材でもあると認識を新たにした。力を入れて描いても、穂先がばらけないなど、「ぺんてる筆」の良さは表現を描き出すのに最適なのだと感じた。

羽山淳一さんプロフィール

アニメーター、キャラクターデザイナー。
1965年、長野県出身。
高校卒業後ムッシュ・オニオン・プロダクションに入社。

『Gu-Guガンモ』(1984年)で動画デビュー。
『は〜いステップジュン』(1985年)で原画デビュー。
『北斗の拳』(1987年)で作画監督デビュー。
『BE-BOP HIGHSCHOOL』(1989年)でキャラクターデザイン、デビュー。

1990年フリーランスとして独立。

*羽山淳一さん公式ホームページ
 http://members.jcom.home.ne.jp/mtfeather/

*羽山淳一さんの公式ツイッター
 https://twitter.com/hayama11

*羽山淳一ライブドローイング「アニメキャラクターの作画&デザインテクニック」  





ライブドローイングの様子は、動画でも観る事ができる。


「ぺんてる筆」商品詳細
ページ
http://www.pentel.co.jp/products/brushpens/brushtype/pentelfude/


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