
2014年2月に鮮烈なデビューを飾った「オレンズ0.2mm」。製図用シャープペンでは、かつて0.2mmタイプはあったものの、あくまでもプロ向けというものだった。0.2mmシャープペンの存在は一般にはあまり知られていなかった。そのためだろうか、「オレンズ0.2mm」を見た多くの人たちは、まるで初めて見るかのように驚いていた。
しかも、0.2mmという芯の細さにもかかわらず、ふつうに気持ちよく書いていけるという点がさらに話題を呼んだ。芯をパイプで覆ったまま心地よく書いていける画期的なシャープペンが市場導入したのだ。
発売直後、あっという間に店頭では品切れ状態になり、長らく手に入れるのが困難な状況が続いていた。
私の記憶では、ぺんてるでこれほどまでに注目を集めるシャープペンはなかったように思う。発売わずか1年で、すでに100万本が出荷されているという、すさまじいハイペースで売れ続けている。

「オレンズ0.2mm」の大ヒットを受け、ユーザーの間ではもう少しだけ太く書いてみたいという声を受けて、2015年1月から「オレンズ0.3mm」が発売された。
今回は、「オレンズ」のデザイナーである柴田智明さん、マーケティング担当の水口和也さんにお話しをお伺いした。

「オレンズ」のプロダクトデザインを担当された
ぺんてる株式会社 商品戦略部 クリエイティブセンター プロダクトデザイングループ 柴田智明さん
柴田さんは、アイン替芯シュタインのケースや、エナージェルシリーズ全てのデザインも手がけている

「オレンズ」マーケティング担当の
ぺんてる株式会社 国内営業本部 マーケティング推進部 筆記具・修正具グループ 水口和也さん
■「オレンズ0.3mm」書き味チェック!
ボディデザインは、「オレンズ0.2mm」タイプと全く同じ。では、その書き味はどうだろうか。0.3mmになったことで違う点はあるのだろうか。

使い方も0.2mmタイプと同じで、ペン先のガイドパイプが完全に収納されていることを確認した上で、ワンノックする。
すると、ガイドパイプがニョキッと出てくる。芯は出ていない。これでスタンバイOK。この芯が出ていない状態で書いていくのが「オレンズ」スタイル。

ペン先を出してみると、ガイドパイプが太いのに気づく。0.3mmなのだから当たり前といえば当たり前だ。
しかし、0.1mmしか違わないのに、見た目には結構太く感じるから不思議だ。

左が0.2mm、右が0.3mm
そのペン先を紙の上に添えて走らせてみる。次に感じるのは少々硬めな感触。0.2mmタイプと書き比べると、ほんのわずかだがタッチに硬さがある。これは、ガイドパイプの直径ならびに、その厚みが増しているためだという。つまり、ガイドパイプの紙への接地面積が広くなっているのだ。
このガイドパイプは完全に固定されていない。紙に触れたらどんどん内側にスライドされる。
このタッチの硬さが「オレンズ0.3mm」ならではの点。わずか0.1mmの書き味の違いをぜひ堪能してほしい。

■「オレンズ」のカラーにはルールがあった
「オレンズ」の0.2mm、0.3mmのいずれにも、レギュラーカラーが5色設定されている。ブラック、イエロー、ピンク、スカイブルー、ホワイト。このカラー展開はあるルールに則って決められている。私は、ビビッドなカラーリングだな、くらいの認識しか持っていなかった。

「実は、これなんです」と柴田さんが示してくれたのが、印刷の色校正で紙面の片隅にある基本4原色だ。
「CMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)」とも呼ばれるものだ。


これらの色をベースにオレンズのレギュラーカラーは考えられたのだという。なるほど、たしかにそのとおりだ。
仕事では、何度もこの4原色を見ていたが、全然気づかなかった。

それぞれの色が補色関係にあり、独立した色になっているのが特長。似ている色どうしを並べた色相環というものがあり、そこにオレンズのレギュラーカラーを並べると、ちょうど等間隔になる。


柴田さんは、「オレンズ」のボディカラーを選ぶ際、様々なカラーを検討したという。パステルカラーからシックなものまでありとあらゆる色を。
一方、ボディ形状については、多くの人の手に渡るようにするためシンプルにするということが決まっていた。その分、色で主張しよう! だが奇をてらわずに。そう柴田さんは考えた。
そして、細いけど強く書ける「オレンズ」らしい主張ができる色にしようと、色の中でも特に際だった4原色を選んだという。
このカラールールは徹底していて、新発売した0.2mmの新色にはピンク、スカイブルー、イエローが重なった箇所の混色を選んでいる。実にバランスがとれた色彩設計だ。


色相環にレギュラーカラー、新色を並べるとやはり等間隔になる
■オレンズらしさを追求したボディデザイン
「オレンズ」は0.2mm、0.3mmという極めて細い芯で文字を書いていくので、軸は極細筆記を操りやすいスリムボディになっている。とはいえ、スリムにしただけでは個性が感じられない。
そこで、クリップとペン先のデザインに趣向を凝らしている。クリップは正面からみると細いが、横からはボリューム感がある。細くても強いということを体現したデザインだ。


ペン先の先金(口金とも言う)については、柴田さん自身相当に苦労されたという。
それは、当時のスケッチにもよく表れている。いくつもの先金デザインが検討された。柴田さんが一番苦心したのは、極細文字を書きやすくするためにペン先の視界をどのようによくするかだった。一番やりやすい方法は、「グラフ1000」のようにペン先をガクンガクンと段差をつけるやり方だ。

「グラフ1000」のこのガクンガクンと段差のある先金は、その後の製図用シャープペンのお手本となった
しかし、それでは製図用シャープペンに見えてしまう。「オレンズ」はあくまでも一般の人にふつうに使ってもらう極細シャープペンだ。製図用シャープペンとは違うフォルムにしたかった。
そして、先金の中程をえぐりとるようにへこませるフォルムにたどりついた。


開発当時、柴田さんが検討を重ねた先金デザインの数々

「オレンズ」の先金フォルム
先金のフォルムに合わせ、持ち手であるグリップのデザインには、リング状の加工が幾重にもある。ペン先に行くに従い、その間隔がだんだん狭くなり、ペン先の先端にそれらが集中している。これは、この特徴的なペン先に自然に目がいくようにするためだという。

「オレンズ」商品詳細ページ
http://www.pentel.co.jp/products/automaticpencils/orenz/

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しかも、0.2mmという芯の細さにもかかわらず、ふつうに気持ちよく書いていけるという点がさらに話題を呼んだ。芯をパイプで覆ったまま心地よく書いていける画期的なシャープペンが市場導入したのだ。
発売直後、あっという間に店頭では品切れ状態になり、長らく手に入れるのが困難な状況が続いていた。
私の記憶では、ぺんてるでこれほどまでに注目を集めるシャープペンはなかったように思う。発売わずか1年で、すでに100万本が出荷されているという、すさまじいハイペースで売れ続けている。

「オレンズ0.2mm」の大ヒットを受け、ユーザーの間ではもう少しだけ太く書いてみたいという声を受けて、2015年1月から「オレンズ0.3mm」が発売された。
今回は、「オレンズ」のデザイナーである柴田智明さん、マーケティング担当の水口和也さんにお話しをお伺いした。

「オレンズ」のプロダクトデザインを担当された
ぺんてる株式会社 商品戦略部 クリエイティブセンター プロダクトデザイングループ 柴田智明さん
柴田さんは、アイン替芯シュタインのケースや、エナージェルシリーズ全てのデザインも手がけている

「オレンズ」マーケティング担当の
ぺんてる株式会社 国内営業本部 マーケティング推進部 筆記具・修正具グループ 水口和也さん
■「オレンズ0.3mm」書き味チェック!
ボディデザインは、「オレンズ0.2mm」タイプと全く同じ。では、その書き味はどうだろうか。0.3mmになったことで違う点はあるのだろうか。

使い方も0.2mmタイプと同じで、ペン先のガイドパイプが完全に収納されていることを確認した上で、ワンノックする。
すると、ガイドパイプがニョキッと出てくる。芯は出ていない。これでスタンバイOK。この芯が出ていない状態で書いていくのが「オレンズ」スタイル。

ペン先を出してみると、ガイドパイプが太いのに気づく。0.3mmなのだから当たり前といえば当たり前だ。
しかし、0.1mmしか違わないのに、見た目には結構太く感じるから不思議だ。

左が0.2mm、右が0.3mm
そのペン先を紙の上に添えて走らせてみる。次に感じるのは少々硬めな感触。0.2mmタイプと書き比べると、ほんのわずかだがタッチに硬さがある。これは、ガイドパイプの直径ならびに、その厚みが増しているためだという。つまり、ガイドパイプの紙への接地面積が広くなっているのだ。
このガイドパイプは完全に固定されていない。紙に触れたらどんどん内側にスライドされる。
このタッチの硬さが「オレンズ0.3mm」ならではの点。わずか0.1mmの書き味の違いをぜひ堪能してほしい。

■「オレンズ」のカラーにはルールがあった
「オレンズ」の0.2mm、0.3mmのいずれにも、レギュラーカラーが5色設定されている。ブラック、イエロー、ピンク、スカイブルー、ホワイト。このカラー展開はあるルールに則って決められている。私は、ビビッドなカラーリングだな、くらいの認識しか持っていなかった。

「実は、これなんです」と柴田さんが示してくれたのが、印刷の色校正で紙面の片隅にある基本4原色だ。
「CMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)」とも呼ばれるものだ。


これらの色をベースにオレンズのレギュラーカラーは考えられたのだという。なるほど、たしかにそのとおりだ。
仕事では、何度もこの4原色を見ていたが、全然気づかなかった。

それぞれの色が補色関係にあり、独立した色になっているのが特長。似ている色どうしを並べた色相環というものがあり、そこにオレンズのレギュラーカラーを並べると、ちょうど等間隔になる。


柴田さんは、「オレンズ」のボディカラーを選ぶ際、様々なカラーを検討したという。パステルカラーからシックなものまでありとあらゆる色を。
一方、ボディ形状については、多くの人の手に渡るようにするためシンプルにするということが決まっていた。その分、色で主張しよう! だが奇をてらわずに。そう柴田さんは考えた。
そして、細いけど強く書ける「オレンズ」らしい主張ができる色にしようと、色の中でも特に際だった4原色を選んだという。
このカラールールは徹底していて、新発売した0.2mmの新色にはピンク、スカイブルー、イエローが重なった箇所の混色を選んでいる。実にバランスがとれた色彩設計だ。


色相環にレギュラーカラー、新色を並べるとやはり等間隔になる
■オレンズらしさを追求したボディデザイン
「オレンズ」は0.2mm、0.3mmという極めて細い芯で文字を書いていくので、軸は極細筆記を操りやすいスリムボディになっている。とはいえ、スリムにしただけでは個性が感じられない。
そこで、クリップとペン先のデザインに趣向を凝らしている。クリップは正面からみると細いが、横からはボリューム感がある。細くても強いということを体現したデザインだ。


ペン先の先金(口金とも言う)については、柴田さん自身相当に苦労されたという。
それは、当時のスケッチにもよく表れている。いくつもの先金デザインが検討された。柴田さんが一番苦心したのは、極細文字を書きやすくするためにペン先の視界をどのようによくするかだった。一番やりやすい方法は、「グラフ1000」のようにペン先をガクンガクンと段差をつけるやり方だ。

「グラフ1000」のこのガクンガクンと段差のある先金は、その後の製図用シャープペンのお手本となった
しかし、それでは製図用シャープペンに見えてしまう。「オレンズ」はあくまでも一般の人にふつうに使ってもらう極細シャープペンだ。製図用シャープペンとは違うフォルムにしたかった。
そして、先金の中程をえぐりとるようにへこませるフォルムにたどりついた。


開発当時、柴田さんが検討を重ねた先金デザインの数々

「オレンズ」の先金フォルム
先金のフォルムに合わせ、持ち手であるグリップのデザインには、リング状の加工が幾重にもある。ペン先に行くに従い、その間隔がだんだん狭くなり、ペン先の先端にそれらが集中している。これは、この特徴的なペン先に自然に目がいくようにするためだという。

土橋が注目したポイント
- ガイドパイプで芯を覆いながら書くという「オレンズ」スタイル。0.2mmと0.3mmでは微妙にそのフィーリングが違うのが面白かった。そこで思ったのが、「オレンズ」の0.5mmや0.7mmで書いたら、それはどんなフィーリングになるかということ。
- 「オレンズ」のボディカラーのルールは、実に合理的で興味深かった。CMYKの4原色だったとは思いもよらなかった。こうした普遍的な色選びは時代がいくら経っても色あせることはない。正しい色選びであるのを感じた。
「オレンズ」商品詳細ページ
http://www.pentel.co.jp/products/automaticpencils/orenz/

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