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作品を前にしてそう説明されたが、私も信じられなかった。というのも、絵の中には1mmにも満たない繊細な線が異常なほどに描きこまれているし、その一本一本の筆跡にはインクの濃淡が見事に表現されている。筆ペンでは、さすがにこうした細かな表現はできない。
常識的に考えれば。
しかし、この細密画はまぎれもなく「ぺんてる筆」で描かれたものだった。さらに驚かされたのは、「ぺんてる筆」の極細だけしか使われていないこと。大まかな構成を決める下描きだけは鉛筆を使っているが、それ以外の画材は一切使わず、ただただ「ぺんてる筆」極細だけで描かれている。
その作者MIZOさんは、現在ネパールを拠点に創作活動を行っている。今回、個展開催のため来日されているタイミングでお話しをお伺いすることができた。
この「ぺんてる筆」極細で、細密画は創り出されている
■絵を描くキャリアは幼稚園に入る前から
その作者MIZOさんは、現在ネパールを拠点に創作活動を行っている。今回、個展開催のため来日されているタイミングでお話しをお伺いすることができた。
この「ぺんてる筆」極細で、細密画は創り出されている
■絵を描くキャリアは幼稚園に入る前から
ご両親ともに絵を本格的に描いているという環境で育ったこともあり、MIZOさんは物心ついたころからすでに絵を描いていた。
ただ、MIZOさんの場合は、世の中で言うところの子供がお絵かきを楽しむというのとは大きくかけ離れたものだった。
ただ、MIZOさんの場合は、世の中で言うところの子供がお絵かきを楽しむというのとは大きくかけ離れたものだった。
ご両親の絵に対する教育は相当厳しかったと語るMIZOさん。当然、幼稚園に入る頃には、まわりの子供に比べてその腕前はかなり上だったという。
画家MIZOさん
画家MIZOさん
幼稚園のお絵かきの時間で、メインの絵は満足のいく仕上がりに描けたが、背景がうまく描ききれずとても悔しい思いをしたのを今でも覚えているという。MIZOさんにとって、この時すでに絵を描くこと自体が創作活動だったようだ。
当時よく練習させられたのは、静物画。MIZOさんは、何かを見て描くのがイヤでしかたなかった。それよりも自分の好きなもの、たとえばマンガのキャラクターを描くことに喜びを感じていた。
■登山にものめり込んでいく
その後も絵を描き続け、美大へと進んでいく。絵を描くことと並行して興味を持っていたのが、登山だった。小学生の頃から登りはじめ大学生の時には、世界各地の標高何千メートル級の山々にも挑戦していた。
MIZOさんは、登山をするだけでなく、目の前に広がる大自然の絵も描いていた。そんな中で訪れたのがネパールだった。ネパールは登山をするものにとって憧れの地である。世界には8,000m級の山が14山ある。そのうち8山がネパールにある。MIZOさんはネパールの様々な山に登り、すっかりその大自然に魅了されてしまったという。
MIZOさんを魅了したネパールの大自然
ネパールでの登山を楽しむMIZOさん
大学卒業後も日本でお金をためては、年に数回ネパールの山々に登り、絵を描くという「登山・創作」生活を送っていた。
MIZOさんが拠点としたネパール ランタンエリア
冒頭でも紹介したように、MIZOさんの作り出す細密画は、「ぺんてる筆」極細だけで描かれている。そもそもなぜ「ぺんてる筆」を選んだのか。それは、他のどんな筆記具よりも細い線が描けるから、その一点に尽きるという。
幼い頃から絵を描いていたMIZOさんにとって、筆は使い慣れたものだった。しかし、通常の絵筆では思うような細い線がどうしても描けなかった。筆以外でも色々な筆記具を試した。たとえば製図用のロットリングやピグマといった極細ペンでも書いてみたが、理想とする線にはならなかった。
筆ペンもありとあらゆるメーカーのものを試した末、最終的に行き着いたのが「ぺんてる筆」の極細だった。
MIZOさんが細く描きたい一番のモチーフは人物の目だという。目の繊細さが思うように描けるのは、「ぺんてる筆」をおいて他にはないという。
MIZOさんにとって目の繊細さを表現できる「ぺんてる筆」(極細)
■登山にものめり込んでいく
その後も絵を描き続け、美大へと進んでいく。絵を描くことと並行して興味を持っていたのが、登山だった。小学生の頃から登りはじめ大学生の時には、世界各地の標高何千メートル級の山々にも挑戦していた。
MIZOさんは、登山をするだけでなく、目の前に広がる大自然の絵も描いていた。そんな中で訪れたのがネパールだった。ネパールは登山をするものにとって憧れの地である。世界には8,000m級の山が14山ある。そのうち8山がネパールにある。MIZOさんはネパールの様々な山に登り、すっかりその大自然に魅了されてしまったという。
MIZOさんを魅了したネパールの大自然
ネパールでの登山を楽しむMIZOさん
この登山で絵を描くという時に、使っていたのが「ぺんてる筆」だった。登山する際、リュックに詰め込む荷物は最小限に絞り込まねばならない。一回の登山で持っていける荷物の総重量は大体55Kg。登山のための道具もあるので、画材をたくさん持っていく訳にはいかない。A4ファイルにたくさんの紙を入れて、この「ぺんてる筆」数本を持って行くという。
ちなみに、標高が高くなると気圧も高くなるため、「ぺんてる筆」のインクが漏れてしまうこともあったという。漏れてしまったインクは他の「ぺんてる筆」の穂先に付けて、付けペンのように描いたりもしたそうだ。
大学卒業後も日本でお金をためては、年に数回ネパールの山々に登り、絵を描くという「登山・創作」生活を送っていた。
MIZOさんが拠点としたネパール ランタンエリア
ネパールに行くたびに、画材を始めとする様々な道具を日本から持っていき、登山が終わるとそれらをまた日本に持って帰る。それが面倒になり、ついには2004年にネパールはランタンの「キャンジン・ゴンパ」というエリアに自ら小屋を建てて、そこを拠点に活動をするようになった。ランタンエリアは、ネパールの中でも屈指のトレッキングエリアだ。
MIZOさんはネパールを創作活動の拠点にするだけでなく、現地の子供たちに絵を教えたり、復興支援も行っている。
後編で詳しく紹介するが、2015年4月25日に起こったネパール地震で、MIZOさんの小屋がある「ランタン」エリアは地震と雪崩、土砂崩れにより壊滅的な被害を受けてしまったという。
ネパールでは創作活動以外に、子供たちに絵も教えているという。
■「ぺんてる筆」極細を選んだ理由
MIZOさんはネパールを創作活動の拠点にするだけでなく、現地の子供たちに絵を教えたり、復興支援も行っている。
後編で詳しく紹介するが、2015年4月25日に起こったネパール地震で、MIZOさんの小屋がある「ランタン」エリアは地震と雪崩、土砂崩れにより壊滅的な被害を受けてしまったという。
ネパールでは創作活動以外に、子供たちに絵も教えているという。
■「ぺんてる筆」極細を選んだ理由
冒頭でも紹介したように、MIZOさんの作り出す細密画は、「ぺんてる筆」極細だけで描かれている。そもそもなぜ「ぺんてる筆」を選んだのか。それは、他のどんな筆記具よりも細い線が描けるから、その一点に尽きるという。
幼い頃から絵を描いていたMIZOさんにとって、筆は使い慣れたものだった。しかし、通常の絵筆では思うような細い線がどうしても描けなかった。筆以外でも色々な筆記具を試した。たとえば製図用のロットリングやピグマといった極細ペンでも書いてみたが、理想とする線にはならなかった。
筆ペンもありとあらゆるメーカーのものを試した末、最終的に行き着いたのが「ぺんてる筆」の極細だった。
MIZOさんが細く描きたい一番のモチーフは人物の目だという。目の繊細さが思うように描けるのは、「ぺんてる筆」をおいて他にはないという。
MIZOさんにとって目の繊細さを表現できる「ぺんてる筆」(極細)
土橋が注目したポイント
- 想像以上に「ぺんてる筆」が繊細で表現力が豊かであることに驚いた。そもそも「ぺんてる筆」は獣毛筆の最高峰と言われる「いたち」の毛を目指すということで開発されたものだ。一本一本の毛先がだんだんと細くなっている他の筆ペンにはない構造を持っている。この独自の穂先は、美しい文字だけでなく、細密画を描く時にも大いに活かされているのを感じた。
MIZOさんプロフィール
20年以上、ぺんてるの筆ペンのみを使って細密画を描いている筆ペン画家。
1978年東京生まれ。2000年に多摩美術大学(絵画科 版画専攻)卒業。1998年にネパールのランタンに出会い、2004年からは自らの住居兼アトリエとして小屋を建設。多くの時間をランタンで過ごし、制作活動を行っている。2007年から日本で寄付を募り、ランタンの復興支援を開始。2009年 個展「MIZO展」(銀座ラ・メール)、2015年 個展「MIZO展」(原宿ガレリア)。2016年9月26日〜10月1日にフランス「パリ」でグループ展への参加を予定。(詳細はFacebookにて記載)1999年「ヤラピーク、ガンジャラピーク」登頂。2000年「南米最高峰アコンカグア」登頂。2004年「北米最高峰マッキンリー」登頂。
■Facebookページ https://www.facebook.com/japanmizo
ネパール、ランタンエリアのための寄付のお願い
今回の震災により、MIZOさんはFacebook上で寄付を開始したという。
寄付金の用途もFacebook上で随時公開していくそうだ。
■https://www.facebook.com/japanmizo/posts/1593551167550847
アートイベント「アート・ヴィレッジパーティー」に出展
作品の原画展示、代表作LOSTの複製画販売、ポスターやポストカードの販売を予定。
場所:横浜赤レンガ倉庫1号2階(入場無料)
2015年7月24日(金)〜26日(日)11:00〜19:00(最終日は18:00まで)
■https://www.facebook.com/artvillageparty
20年以上、ぺんてるの筆ペンのみを使って細密画を描いている筆ペン画家。
1978年東京生まれ。2000年に多摩美術大学(絵画科 版画専攻)卒業。1998年にネパールのランタンに出会い、2004年からは自らの住居兼アトリエとして小屋を建設。多くの時間をランタンで過ごし、制作活動を行っている。2007年から日本で寄付を募り、ランタンの復興支援を開始。2009年 個展「MIZO展」(銀座ラ・メール)、2015年 個展「MIZO展」(原宿ガレリア)。2016年9月26日〜10月1日にフランス「パリ」でグループ展への参加を予定。(詳細はFacebookにて記載)1999年「ヤラピーク、ガンジャラピーク」登頂。2000年「南米最高峰アコンカグア」登頂。2004年「北米最高峰マッキンリー」登頂。
■Facebookページ https://www.facebook.com/japanmizo
ネパール、ランタンエリアのための寄付のお願い
今回の震災により、MIZOさんはFacebook上で寄付を開始したという。
寄付金の用途もFacebook上で随時公開していくそうだ。
■https://www.facebook.com/japanmizo/posts/1593551167550847
アートイベント「アート・ヴィレッジパーティー」に出展
作品の原画展示、代表作LOSTの複製画販売、ポスターやポストカードの販売を予定。
場所:横浜赤レンガ倉庫1号2階(入場無料)
2015年7月24日(金)〜26日(日)11:00〜19:00(最終日は18:00まで)
■https://www.facebook.com/artvillageparty
後編につづく
*後編では、「ぺんてる筆」極細を駆使したMIZOさん独自の描き方をご紹介