「探検と冒険は全く違うんです」
そう語るのは、探検家 髙橋大輔さん。探検は、何かを探して検証すること。たとえば、探検家には、砂漠の遺跡を発掘する考古学者や新種の生物を見つける学者などがいる。面白いところでは宇宙飛行士も探検家にあてはまるという。たしかに、宇宙で調査をしている訳だから、まさしく探検だ。
一方、冒険は文字通り危険を冒して行うこと。たとえば、エベレストを無酸素で登るといった肉体的限界を試すチャレンジが多いという。このふたつを混同していたが、こう説明をされると実に明快だ。
髙橋さんは探検活動においてぺんてるの「マルチ8(エイト)」を永年愛用している。髙橋さんが探検家になった経緯、そして「マルチ8」が探検人生の中でどのような活躍を見せているかをお聞きしてきた。
髙橋さんが愛用している「マルチ8」
■探検に興味を持ったきっかけ
探検家 髙橋大輔さん
高校2年生の時、ホームステイでアメリカ ミネソタ州に行ったところから始まる。
しかし、このアメリカ滞在は髙橋さんにとって記憶に残る苦い経験となった。
ホームステイに行く前まで、髙橋さんはアメリカに対して、毎日分厚いステーキを食べるなど、映画に出てくるような生活をイメージしていた。しかし、ステイした家が大きな牧草地を持っていたため、来る日も来る日も干し草積みをさせられるという壮絶な毎日を経験した。ふつうアメリカに滞在すると、食生活の変化からすっかり太ってしまうものだが、髙橋さんの場合は逆で、10kgも痩せてしまったという。
もう、旅はイヤだと心底思ったという。
しかし、自分がピンチに追い込まれたり、記憶に残るネガティブな経験というのは、あまりに印象が強いせいか、その後の人生でボディブローのように効き、表面化してくる。
大学では、政治学を専攻した。一年生の時に傾倒していたマルクスの影響でロシア(当時のソ連)に行った。マルクスが理想とする共産主義とは、一体どんなものなのかという事を自分の目で確かめたくなったのだという。実際に行ってみると、理想とはほど遠いものだった。何を買うにも長い行列に並ばなくてはならないという状況。さんざん並んだあげくに入った洋服屋さんには同じ色、同じデザインの洋服が並んでいるだけ。すっかり打ちのめされ、肩を落として日本へと帰国した。
髙橋さんの探検人生のきっかけとなったシベリア旅行
このロシアへの旅は、陸路シベリア鉄道を使った。髙橋さんは乗車中、車窓をぼんやりと眺めていた。10日間も乗り続けたシベリア鉄道の線路は、一度も曲がることなくひたすら真っ直ぐ進んでいたという。その車窓から見える景色は、はじめロシアの白樺の森景色だったのが、次第にモンゴルの草原になり、さらには中国の黄色い土景色へと変わっていった。この時、髙橋さんはこれまで味わったことのない不思議な感覚に襲われたという。それは、地球上には「水平な世界」があるということだった。
世界中には、ユーラシア、アフリカ、オーストラリア、南極、北アメリカ、南アメリカなど、いくつもの大陸がある。このシベリア鉄道で味わったこと以外に、また違った世界があるはずだ。それを自分の足で歩いてみたいという想いがつのっていった。アメリカのホームステイで、もう旅はイヤだと思ったはずの髙橋さんは、このシベリア鉄道での体験により、逆に旅への想いが高まっていくことになった。
■探検することを承知で入社を認めてくれた会社
その後の大学生活では、バックパッカーとして世界中を旅した髙橋さん。4年生になり、そろそろ就職活動をはじめようとした時、直前に渡航したアマゾンで両足を骨折してしまった。当然、就職活動どころではない。
そんな時に、ふと手にしたある雑誌で「サントリー夢大賞(1989年サントリー株式会社創業90周年を記念し『あなたの夢を実現します』という一般公募企画)」というものを知った。途方もない夢を応募して、採用されるとその夢のためにお金を支援してくれる企画だった。就職活動ができないのならと、髙橋さんはこの企画に応募した。髙橋さんの夢は、アフリカ大陸を水路で横断するというものだった。
ついこの間アマゾンで両足を折った人が考える夢ではないようにも思うのだが。。。
応募総数13,000通の中で、髙橋さんの夢は最終審査11通に残った。しかし、残念ながら大賞を逃してしまった。そこでどうしても諦めきれなかった髙橋さんは、サントリーに直接手紙を書いて、事務局で働かせて欲しいと頼んだ。しかし、今年の採用は終わったという返事。
ただ、サントリーの担当者は髙橋さんの熱意に押され、この夢企画を一緒に取り組んでいた広告代理店に、こんな若者がいると紹介をしてくれた。
なんとその広告代理店の社長が、髙橋さんに興味を示した。後日社長室に呼ばれ、「うちの会社に入らないか?」と誘われた。社長は当然、アフリカ大陸の水路での横断を夢見る若者であることは百も承知だ。
髙橋さんはその申し出を受け、その広告代理店に入社した。
このように、かなりユニークな経緯で入社したものだから、その後も定期的に有給休暇をとって世界各地に探検し続けるという、不思議な会社勤めが始まった。言わば、会社公認の探検家社員という訳だ。
■髙橋さんが探検で探し求めていること
しかし、そもそも探検は、地理学から生まれたと言われている。まだ世界地図が完成していなかった時代、地図の空白を埋めるべく行われていた。現代では地球上の地図の空白は埋め尽くされている。
南米チリにあるロビンソン・クルーソー島
では、髙橋さんは探検で何を探し検証しているのか?
それは「物語」であるという。世界には「What」、つまり「なに?」を追求するだけではわかり得ないことがある。「What」以外の4W1H、なぜ、どのように、いつ、どこでといったことが必ず存在している。髙橋さんはそうした物語を追求している。
最も興味を惹かれたのが、ロビンソン・クルーソーだった。誰もが本を読んで知っている人物だが、彼がどのように無人島で暮らしていたかを、実際に調べた人はこれまでいなかった。
その住居あとを探して、そこに込められた物語を探ってみようと思ったという。
ロビンソン・クルーソー島の大きなオニブキの林を探検する髙橋さん
何年もかけて島を探検し、ようやく髙橋さんが見つけたロビンソン・クルーソーの住居跡
髙橋大輔さんプロフィール
探検家・作家。1966年秋田市生まれ。
「物語を旅する」をテーマに世界各地、日本全国に伝わる神話、伝説、昔話などの伝承地にフィクションとノン・フィクションの接点を求め、旅を重ねている。2005年にはナショナル ジオグラフィック協会(米国)から支援を受けた国際探検隊を率い、実在したロビンソン・クルーソーの住居跡を発見。探検家クラブ(米国)、王立地理学協会(英国)フェロー会員
■ 探検家 髙橋大輔のブログ http://blog.excite.co.jp/dt
■ Facebook ページ http://facebook.com/tankenka
探検家・作家。1966年秋田市生まれ。
「物語を旅する」をテーマに世界各地、日本全国に伝わる神話、伝説、昔話などの伝承地にフィクションとノン・フィクションの接点を求め、旅を重ねている。2005年にはナショナル ジオグラフィック協会(米国)から支援を受けた国際探検隊を率い、実在したロビンソン・クルーソーの住居跡を発見。探検家クラブ(米国)、王立地理学協会(英国)フェロー会員
■ 探検家 髙橋大輔のブログ http://blog.excite.co.jp/dt
■ Facebook ページ http://facebook.com/tankenka
土橋が注目したポイント
- 就職活動をせずに、「サントリー夢大賞」に応募するというのは、なかなかできるものではない。私とほぼ同世代なので、当時としてはいかに髙橋さんの行動が突拍子ないかがよくわかる。しかし、結果としてその応募が就職活動になっていったのが、実に面白い。形だけの活動ではなく、想いを伝えるという一番大切なことを髙橋さんは「夢企画」を通じてやってのけたのだ。
*後編はこちら
「マルチ8」商品詳細ページ
http://www.pentel.co.jp/products/automaticpencils/multi8supermulti8/
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