「ゆびえのぐ」
私は、はじめて聞く言葉だった。2015年9月にぺんてるから発売された新製品である。
やはりはじめて聞く人が多かったようで、リリース後に各方面からたくさんの反響があったという。
やはりはじめて聞く人が多かったようで、リリース後に各方面からたくさんの反響があったという。
ぺんてる「ゆびえのぐ」全8色。8色セット 10,000円+消費税、各色 1,250円+消費税
海外では「フィンガーペイント」という名でかなり古くから親しまれている。そもそもはアメリカの幼児教育学者がイタリアのローマではじめたものだそうだ。1931年ということだから、かなりの歴史がある。
文字どおり指や手に直接つけて描くえのぐだ。イメージとしては背中の真ん中で描くとも言われ、全身を動かしてのびのびと描くことで、こどもの心を解放させたり、セラピーとして自閉症の改善が見られたりすることもあるそうだ。
今回は、この「ゆびえのぐ」の開発に携わった方々にお話を伺った。
「ゆびえのぐ」の開発を担当した、ぺんてる 商品開発本部 画材企画開発部 画材開発課 黒沢 洋介さん(左)鎌田 理沙さん(右)。
鎌田さんはまだ入社2年目だという。
ぺんてるでは、画材の製造販売だけでなく、小学校の先生を目指す学生の方々に画材情報を提供する活動も行っている。
国内営業本部 マーケティング推進部 画材グループ 植原 克彦さんはその活動にも従事されている。
文字どおり指や手に直接つけて描くえのぐだ。イメージとしては背中の真ん中で描くとも言われ、全身を動かしてのびのびと描くことで、こどもの心を解放させたり、セラピーとして自閉症の改善が見られたりすることもあるそうだ。
今回は、この「ゆびえのぐ」の開発に携わった方々にお話を伺った。
「ゆびえのぐ」の開発を担当した、ぺんてる 商品開発本部 画材企画開発部 画材開発課 黒沢 洋介さん(左)鎌田 理沙さん(右)。
鎌田さんはまだ入社2年目だという。
ぺんてるでは、画材の製造販売だけでなく、小学校の先生を目指す学生の方々に画材情報を提供する活動も行っている。
国内営業本部 マーケティング推進部 画材グループ 植原 克彦さんはその活動にも従事されている。
「ゆびえのぐ」のマーケティング担当の ぺんてる 国内営業本部
マーケティング推進部 画材グループ 課長 余頃 泰之さん
■実は日本でも以前から行われていた
筆などの道具を一切使わず指や手で描くことは日本でもかなり以前から行われていた。しかし、当時は専用の「ゆびえのぐ」はなく幼稚園などでは色々と工夫されていた。
たとえば、「液体粘土」を使った方法がある。粘土とは言っているが、いわゆる粘土のような硬さはなく、イメージとしてはお豆腐のようなグニャグニャとした柔らかさ。それにえのぐを混ぜて指や手で描いていくものだ。ベースとなる液体粘土自体が白いので、えのぐを混ぜてもどうしても白っぽい「乳白色」のような色あいになってしまう。鮮やかな色が出しにくいというデメリットがある。
たとえば、「液体粘土」を使った方法がある。粘土とは言っているが、いわゆる粘土のような硬さはなく、イメージとしてはお豆腐のようなグニャグニャとした柔らかさ。それにえのぐを混ぜて指や手で描いていくものだ。ベースとなる液体粘土自体が白いので、えのぐを混ぜてもどうしても白っぽい「乳白色」のような色あいになってしまう。鮮やかな色が出しにくいというデメリットがある。
また、小麦粉を水で溶かして、そこにえのぐを混ぜるという方法もある。ただ、小麦粉アレルギーを持ったお子さんがいる場合などは使えないという問題があった。手法は様々だが、指や手で直接描く「フィンガーペイント」は昔から行われていた。
小さいお子さんにとって筆を使って描くのはなかなか難しい。上手にできる子もいれば、出来ない子も出てきてしまう。指や手であれば、そうしたことがなく、誰でも自由に描ける良さがある。ちょうどこどもが地面に指で何かを描くのに近いものがあり、こどもが大好きなどろんこ遊び的要素もあって、こどもに最適な創作遊びである。
現在では、小学校低学年の図画・工作の教科書に「手や指を使って描く」という内容が掲載されている。
それに伴い専用えのぐがいくつかのメーカーから出てきている。後発となるぺんてるでは、すでにあるものを作っても意味がないと考え、それまでにないものを作ろうと開発陣が奮起した。
それに伴い専用えのぐがいくつかのメーカーから出てきている。後発となるぺんてるでは、すでにあるものを作っても意味がないと考え、それまでにないものを作ろうと開発陣が奮起した。
■ユニークな容器の採用
まず注目は、その容器だ。見覚えのある形をしている。マヨネーズの容器である。
すでに市場にある「フィンガーペイント」用えのぐは、ハンドクリームの容器のように口の大きいフタ付きのものだった。
これだと、幼稚園などの先生がこどもたちにえのぐを渡す際にスプーンなどですくいあげる必要がある。たくさんの色のえのぐを使えば、
その分何本もスプーンも必要になる。後片付けの手間も増えてしまう。
すでに市場にある「フィンガーペイント」用えのぐは、ハンドクリームの容器のように口の大きいフタ付きのものだった。
これだと、幼稚園などの先生がこどもたちにえのぐを渡す際にスプーンなどですくいあげる必要がある。たくさんの色のえのぐを使えば、
その分何本もスプーンも必要になる。後片付けの手間も増えてしまう。
ぺんてるが採用したマヨネーズ容器なら、それこそマヨネーズを出す時のように容器を握ればグニュッと簡単に出すことができる。マヨネーズと同じで口も星の形をしているので、こどもたちにも好評だ。
このように「ゆびえのぐ」をこどもたちに簡単に出してあげられる
開発段階では、自立式のチューブが色々と検討されたという。
たとえばハチミツ用の容器も候補にあがった。しかし、先端に角があると最後までえのぐを使い切りにくいということで不採用となった。
そもそもマヨネーズ容器はボディがひときわ柔らかくこどもでも扱いやすいという点も都合がよかった。
そもそもマヨネーズ容器はボディがひときわ柔らかくこどもでも扱いやすいという点も都合がよかった。
容器が柔らかいので、こどもでも楽に使える
様々な既存の容器が検討された
■安全基準を徹底的にクリア
ぺんてるの「ゆびえのぐ」では数々の安全基準をクリアしている。
世界で最も厳しいと言われるヨーロッパの「EN71-7」という基準がある。「EN71」とは玩具の安全性を定めた規格だ。使ってはいけない物質が厳格に定められている。最後にある「-7」は「フィンガーペイント」のために定められた基準。なんとヨーロッパでは「フィンガーペイント」だけの基準がある。それほど多くのこどもたちに親しまれているということなのだ。
ぺんてるの「ゆびえのぐ」は、外部の検査機関で「EN71-7」の、えのぐの配合についての基準をクリアしている。これは日本の「フィンガーペイント」用えのぐでは、おそらくはじめてのことだそうだ。
また、えのぐの原材料に食物アレルギー27品目を含有していないことも確認済みだ。
さらには化粧品の開発でよく行われる「パッチテスト」も実施。これは肌の弱い方でも安心して使えるかを確かめるものだ。これもクリアしている。
「ISO8124-3」というおもちゃの安全性についての国際規格の重金属(水銀や鉛など)規制基準にも適合している。
さらには化粧品の開発でよく行われる「パッチテスト」も実施。これは肌の弱い方でも安心して使えるかを確かめるものだ。これもクリアしている。
「ISO8124-3」というおもちゃの安全性についての国際規格の重金属(水銀や鉛など)規制基準にも適合している。
土橋が注目したポイント
- 「ゆびえのぐ」、「フィンガーペイント」という言葉は、今回はじめて聞いたが、自分のこども時代を思い返してみると、そう言えば同じようなことを幼稚園の時にやっていた記憶がある。新聞紙の上でえのぐを付けた手で描いていた。その時のえのぐの独特な感触は今も覚えている。考えてみると手だけで描くというのは、ペンで書くことの基礎になっている。その後の「書く人生」を支える大切なステップなのだ。