学生の2大勉強文具と言えば、「暗記シート」と「単語帳」だ。私も学生時代にこの2つをよく使って勉強したものだ。時代が変わって今や、この2大勉強文具もすっかり進化している。ぺんてるでは、ここ数年デジアナ(デジタル+アナログ)勉強ツールに力を入れている。
すでに販売されている「アンキスナップ」は、言わばデジアナ版の「暗記シート」だ。教科書に蛍光マーカーでマークして、専用アプリを入れたスマホでカシャリと撮るだけで、暗記シートが作れてしまう。使用方法も簡単だ。(詳しくはコチラ)
そして、もうひとつの勉強道具である「単語帳」についてもぺんてるがこのほどデジアナに進化させた。2015年11月に発売された「スマ単」だ。
ぺんてる「スマ単」450円+消費税。専用アプリを入れたスマホと共に使う。
この商品は、ぺんてるとプラス株式会社のコラボで生まれたアイテムだ。
今回はプラス株式会社本社にお伺いし、それぞれの企画担当者の方々にお集まりいただき、開発秘話をお聞きした。
まるでホテルのようなプラス株式会社の本社エントランス
ぺんてるのデジアナ文具の企画リーダー ぺんてる株式会社 国内マーケティング推進部 SWCグループ 課長 田島 宏さん。「アンキスナップ」、「スマ単」の生みの親。
今回の「スマ単」をぺんてると一緒に作り上げたプラス株式会社 マーケティング統括本部 製品事業本部 副本部長 松本 竹志さん(左),マーケティング統括本部 第一製品事業部EOS・紙製品グループ 主任 春名 美沙さん(右)。ちなみに、松本さんのお子さんは、この春第一志望の大学に合格された。その際に「スマ単」を使って受験勉強をされたという。
■ぺんてるからプラスへ、協業のアプローチ
文具業界の中では少々珍しい文具メーカー同士によるコラボレーション。アプローチはぺんてる側からだったという。
田島「ぺんてるでは、すでに『アンキスナップ』を販売し、この分野での確かな手応えを感じていました。同じようにデジタルを融合した単語帳も出したいとかねてより考えていました。しかし、ぺんてるは筆記具メーカーのため、紙製品についての知識が少なく困っていました。そうした中、プラスさんの『カ.クリエ』という絶妙なサイズのノートに注目したんです。これで単語帳が出来たら面白いのではと考え、プラスさんにお声がけさせていただきました。」
松本「スマホアプリの単語帳は、実はすでに世の中にはたくさん存在しています。ただ、設問内容を含めてカスタマイズできるものは無かった。せっかくの文具メーカー同士のコラボですので、これまでにない使い勝手の良いものにしようということになりました。」
私は、今回の「スマ単」を見て、真っ先にひとつの疑問が浮かんだ。
それは筆記具・画材メーカーであるぺんてるがペンのないノートだけを製品として出すことに社内的な反発や田島さんご本人の中にも抵抗感みたいなものがなかったのか?ということ。
田島「そうした反発は社内ではありませんでした。むしろ専門外の紙製品についてはその道のメーカーの力を借りるべきだという考えでした。ぺんてるはその昔、紙製品を自ら手がけて苦い経験をしたことがありました。1990年代に発売されたハイブリッド ミルキー。このペンは黒い紙に書くと筆跡がキレイに表現できる特長がありました。そこで、ぺんてるでは黒い紙の付せんを自ら企画して売り出したのです。当時市場にはそうした付せんはなく、はじめのうちはよく売れましたが、だんだんと売れ行きも鈍くなっていきました。私たちは紙製品についてのノウハウがなく、店頭での日焼けなどの対策を想定することができませんでした。そうした苦い経験から紙はその専門メーカーにお願いするという考えに自然となっていきました。おっしゃるとおり、今回の「スマ単」ではペンは付属していません。この商品におけるぺんてるの強みはアプリにあります。『アンキスナップ』で培ったノウハウが活されているんです」
■スマートな単語帳「スマ単」とは?
表紙のカラーはノートでは、あまり見かけないビビッドなネイビーとピンクが採用されている。
田島「『スマ単』での勉強は基本スマホで行います。ただ、このノートにも愛着を持ってもらいたいと考え、あえてこのカラーリングにしました。」
「スマ単」は、三つ折にしたA4用紙がきれいに収まるサイズのリングノートを採用している。単語帳にしては少々大きめだ。ページを開くとユニークな罫線がデザインされている。このひとつの行を単語帳1枚分と見立て、左ページが単語帳のおもて面で、対応する右ページが裏面といった具合だ。つまり、見開き2ページで12枚分の単語カードを作ることができる。
一般の単語帳に比べるとやや横に広い印象がある。
単語帳というよりもコンパクトなノートというスタイル。
見開き2ページで、12枚分の単語カードを作ることができる。
田島「この罫線フォーマット作成には大変苦労しました。こだわったのは、スマホでの撮影回数をできるだけ少なくしてユーザーの手間を減らすことでした。1ページ内にできるだけたくさんの単語カードを作れるように工夫しました。しかし、あまり行の幅が狭くなると、こんどはスマホで見る時に文字が小さくて見づらくなってしまいます。その相反するせめぎ合いの中で、最終的にこの12行に落ちつきました。」
極細のボールペンを使えば、1行に3行分書き込むことも可能だ。
1つの行の中には約5mmのドット罫があり、細かく書けば文字を3行分が書き込める。単語帳としては珍しいノートスタイルにしたことで細かく書く時も快適に行えるようになっている。これまでの単語帳だと、小さく分厚い単語カードの上に書く必要があり、書きづらさもある。しかし、「スマ単」はフラットなノートなので、手帳やノートのように書いていける良さがある。単語帳作りもスムーズに行えるのだ。
「スマ単」にはペンは付属されていないので、ユーザー各自が好きなペンで書いていく。
田島さんは、筆跡が濃くハッキリ書けて、インクの速乾性もある「エナージェル」と、英単語であれば美しい筆跡が書ける「トラディオ プラマン」がオススメだという。
スマホの性能、データ容量の残り具合にもよるが、「スマ単」には何千枚もの単語カードが保存できる。
ユーザーの間では1,500枚くらいのカードを保存している人はざらにいるという。たくさんの単語帳を持たずに済むのは助かる。
■アナログ単語帳にはない「スマ単」ならではの機能
使い方としては、たとえば英単語を暗記したいのであれば、左ページの1カード(1行)分に日本語を書き、その右隣に英訳を書いていく。通常の単語帳では英単語で1冊、歴史でさらに1冊と分けなければならないが、「スマ単」ではその必要がない。
同じページ内に歴史の年号など他の教科が混在しても全く構わない。アプリ側にフォルダー(カテゴリー)分けできる機能が用意されている。教科が違っても同じノートで完結できる。
フォルダー分け機能により、教科が別々でも同じページに書いていける。
見開き2ページ分を書き終わったら、専用アプリをインストールしたスマホで撮影する。この時、ノートの四隅にある「T」マークを入れる。撮影は一回でもスマホ側には一枚一枚のカードが分割されて読み込まれる。それを「英語」、「歴史」といった自分で決めたカテゴリーに分けていけば、アプリ内で教科ごとの単語帳が出来上がる。
撮影の際は、この「T」マークを四隅に必ず入れる。
見開き2ページで12枚の単語カードを一度に作成できる。
暗記する時は、スマホに単語カードを表示させて自分で答えてタッチしてカードを裏返す。このインターフェースが実にリアル。本当の紙のようにクルリと回転するので、見ていて楽しい。正解していれば、カードを上の「レ」に、間違ってしまった時は下の「×」にドラッグしていく。デジタルではあるが、非常にアナログ性に富んでいる。こうしたところはさすが使い勝手にこだわる文具メーカーによるものだ。
スマホ上でカードをタッチすると、クルリとひっくり返る。
■どのカードが出てくるかわからない
「スマ単」には、通常の単語帳にはない機能がいくつも盛り込まれている。まず「シャッフル機能」というのがある。
たとえば、英単語の暗記をはじめると、毎回カードがシャッフルされ、次のカードが予測できなくなる。紙の単語帳だと、この次はこれ、という具合に流れを予測できてしまうが、この「シャッフル機能」によって、一個一個の単語をまんべんなく暗記することができる。
■不得意なところを重点的に
「絞り込み機能」というものもある。先ほど紹介したように「スマ単」では暗記する時、正解するとカードを上に、間違っていれば下にドラッグしていく。実は、アプリ側でその情報が蓄積されており、それを活かして、間違えてしまったものだけをリストアップするといったこともできてしまう。苦手なところだけを重点的に暗記ができる頼もしい機能だ。
■逆引きもできる
英単語の暗記なら、たとえば英語を先に見て、日本語を答えるということをしていて、たまに、その逆に日本語を見て英語を答えるという暗記をしたいこともある。その場合は、ボタンをひとつ押すだけで最初に出てくるカードを逆にできる。
開発中に塾の英語の先生にヒアリングした際に、「逆引き」もあった方がよいとアドバイスされ、この機能を追加したという。
■暗記のはかどり具合もわかる
自分が今どれくらい暗記できているかは気になるものだ。
「学習進度機能」を使えば、それが瞬時にわかる。過去3回分の正解率が自動的に集計されて円グラフで表示してくれる。定期的にチェックすることで暗記の進み具合も把握できる。これは紙の単語帳ではできないことだ。
自分の正解率がビジュアルで把握できる。
後編では、「スマ単」に採用されたプラス株式会社「カ.クリエ」の開発経緯や「スマ単」のユニークな使い方などを紹介します。
後編はこちら≫
土橋が注目したポイント
- ビジネスパーソンの間では「ノマドワーク」がすっかり定着している。「ノマドワーク」とは、会社のデスクだけでなく、外出先など場所を選ばず仕事をしていくスタイルだ。この「スマ単」は「ノマドスタディ」を快適にしてくれるものだと思う。これまでのようにたくさんの単語帳を持たずに、スマホさえ持っていれば、片手で色々な教科の暗記ができてしまう。便利な時代になったものだ。
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