一般的な単語帳にはない機能が盛りだくさんな「スマ単」。この「スマ単」はプラス株式会社の「カ.クリエ」がベースになっている。A4×1/3(三つ折にしたA4用紙がきれいに収まるサイズ)という新たなスタイルを打ち出し、瞬く間にノートの新しい流れを作り出した。そもそも、この「カ.クリエ」はどんな経緯で生まれたのだろうか。当初より企画・開発を担当したプラスの春名さんにお伺いした。
企画部門のマネージメントであり、今回の「スマ単」をぺんてると一緒に作り上げたプラス株式会社 マーケティング統括本部 製品事業本部 副本部長 松本 竹志さん(左)、
そして同じく「カ.クリエ」の企画担当であり、マーケティング統括本部 第一製品事業部EOS・紙製品グループ 主任 春名 美沙さん(右)。
■社員のカスタマイズノートから生まれた「メモローゼ」と「カ.クリエ」
春名「実は、ある社員のノートの使い方がきっかけだったんです。その社員は技術者で、B5サイズのノートを自分でA4×1/3サイズに裁断して使っていたんです。どうしてそのサイズにしているかと聞いてみると、このサイズだとスーツの胸ポケットやズボンのポケットにも入って携帯性が良い。さらにA4を三つ折りした紙をはさんだり、貼ったりできるので便利だというのです。技術職ということで日頃から様々なデータをまとめた書類を持ち歩くことが多く、それらをノートと一緒にセットできるこのサイズが便利だと彼は話していました。そんなに便利ならばと、その社員が使っているものをベースに試作してみました。実際に使ってみると、確かに便利でした。社内の人にも使ってもらったところ、みんなの評価も高かったんです。コンパクトなのでメモとして使いたいという意見が数多くありました。そこで、商品化にあたっては一枚一枚をキレイに切り取れる糊綴じにしました。それが2011年に発売した『メモローゼ』です。」
「カ.クリエ」のベースとなった「メモローゼ」
春名「ところが、市場ではメモではなく、ノートとして使う人が予想していたより多かったんです。何回もページをめくると紙が取れてしまうという声が寄せられました。そして、開発をさらに進め糸綴じノートの「カ.クリエ」を2013年に発売し、おかげさまでビジネスパーソンを中心に人気を集めています。」
それまでもスリムサイズをうたったノートはいくつか出ていた。「カ.クリエ」が斬新だったのは、「A4×1/3」と大きく打ち出した点だ。
私たちが日頃よく使っている書類はA4サイズ。それと親和性があるということで愛用者が増えていった。
プラスでは「カ.クリエ」用に3つ折りタイプのカレンダーがダウンロードできる。
プラスでは、こうした新製品が発売されると役員の方々に配って実際に使ってもらうことになっている。この「カ.クリエ」は役員の間でもひときわリピート率が高かったそうだ。まさに、求められていたサイズだったのだろう。
これはプラスと日経BPセレクション共同開発の「カ.クリエ」専用の本革カバー。(限定品)
左右に2冊の「カ.クリエ」がセットできる。
A4の紙を3つ折りするのは、やってみるとわかるが意外と難しい。最初に折るときに1/3になっていないとキレイに決まらない。
そこで「カ.クリエ」の全ての表紙には3つ折りのためのガイドラインが用意されている。表紙の片隅にある太い線がそうだ。A4書類の端をここにあわせてノートの表紙分だけ折ると、キレイに三つ折りができる。
サイズを決める上で、スーツの胸ポケットのサイズを色々と調べたという。また、ポケットにスムーズに出し入れできるよう、角丸仕上げにもなっている。
■ビジネス向けノート「カ.クリエ」を「スマ単」に採用した理由
「カ.クリエ」にはA4×1/2、A4×1/3、A4×1/9 の3サイズがある。
「スマ単」の企画リーダー、ぺんてるの田島さんが求めたのは「携帯性」と「スマホでの撮影のしやすさ」だった。
A4×1/3サイズは学生の鞄にも入れやすく、リングノートであることで半分に折り返せばノート単体でも単語帳のようにも使える。そして一度にたくさんのカードを撮影するには、ある程度の大きさが必要。
実は「カ.クリエ」にはA4×1/9という、いわゆるA7サイズもある。手の平サイズということで、従来の単語帳に近いサイズだ。当初、田島さんはこのサイズも検討したそうだ。しかし、このサイズだと1ページに収まるカードが限られてしまうので、より大きいA4×1/3になった。
ぺんてるのデジアナ文具の企画リーダー ぺんてる株式会社 国内マーケティング推進部 グループ 課長 田島 宏さん。「アンキスナップ」そして今回の「スマ単」の生みの親。
■勉強だけでない用途にも
「スマ単」は、様々な暗記で活躍してくれる。英単語や歴史の年号、元素記号などなどありとあらゆる暗記に対応できる。また、学生のみならず社会人の暗記にも使える。たとえば、法律の暗記といった時にも便利だ。
ひとつのカードには3行分が書き込めるスペースがあるので文章などの暗記にも適している。文字は、なにも日本語に限らない。たとえば、外国語のハングルなどもOKだ。仕組みとして手書きしたものを画像としてアプリ側で認識しているので、自由度が高い。そのため文字だけでなく、図やイラストといったものにも対応できる。実際のユーザーの間では、趣味のプロレス技を覚えるために使っているという人までいる。
一枚一枚のカードを画像で認識するということを聞いて、私もひとつ使い方をひらめいた。
そもそも書かずに実物をそのままノートに載せて撮影するという手もアリではないか。たとえば、ペンの一部分を行ごとに並べて、となりに品番を書いてスマホで撮影する。こうすれば、ペンの品番を覚えることができる。
これはペンに限らず、様々な商品情報を覚えるといった社内教育などに使えそうだ。また、美術館や映画の半券を置いて、となりのその感想を書くというもいい。今流行の「ライフログ」的な使い方だ。
実はユーザーの間からもう少したくさん書きたいので一行のスペースを広くしてほしいという声も寄せられている。田島さんは、すでにそうしたタイプの企画も進めているという。それが実現すれば、本格的に勉強以外の用途でも色々と使えそうだ。
ひとつ上のノマドスタディ「スマ単」開発秘話(前編)はこちら≫
土橋が注目したポイント
- 今回の「スマ単」は、アナログとデジタルそれぞれのいいところをうまい具合に結びつけている。単語帳を作る入り口は従来と同じ手書きにし、それを読み取り保存・管理するところだけをデジタルにしている。そのアプリの使い勝手も実に直感的だ。さすが使い勝手にこだわる文具メーカーによるものだ。中でも私が注目したのは、そのアナログとデジタルの境界線。ユーザーへの負担を少なくしてスムーズに結びつけている。具体的には、まとめて撮影でき、それでいてカードは単体で保存されるところだ。使いやすいデジアナ文具に仕上がっている。
- 新しいノートのスタイルを作った「カ.クリエ」。「カ.クリエ」がプラス社員の方のノートがきっかけで生まれたというのははじめてお聞きするお話だった。モノが先にありきではなく、人(使い方)ありきで生まれたものだったからこそ、ヒット商品になったのだろう。
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