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今までに尾形さんが携わったルミネの広告とその舞台裏を紹介したウェブサイト

「ルミネ広告の舞台裏」はコチラ
http://magazine.lumine.ne.jp/?cat=31

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株式会社博報堂 クリエイティブディレクター/コピーライターの尾形真理子さん

「グラフ1000 0.9mm+2B」
というこだわりの組みあわせでルミネの広告をはじめ数々のキャッチコピーを世に送り出している株式会社博報堂 クリエイティブディレクター/コピーライターの尾形真理子さん。後編では一線で活躍するコピーライターの仕事についてお話を伺った。

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言語化できないものを、いかに言語化していくか

言葉を駆使するコピーライターという仕事。しかし、意外なことに尾形さんは言葉は万能ではないと考えている。

「世の中に言語化できるものって果たしてどれくらいあるでしょう。言葉にできる人は偉いと思われがちですが、本当?って私は思います。私たちのまわりには言葉にできないことであふれています。たとえば、野菜のカブの味を言葉にするとどうなるでしょう。大根とも違う少し苦みがある。歯触りだって微妙に違う。丸い、白いと形をたどっても明確に表現できません。つまりコピーライターという仕事は言語化できないものをどう言語化していくかなんです。」

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そうしたことを踏まえ、コピーライターという仕事を尾形さんはこう表現する。

「矢印を言葉でつくる仕事

なるほど!という表現である。そもそもキャッチコピーには目的がある。消費者にこうなって欲しいという状態に変えていくこと。それを矢印のような力強い言葉で仕向けていくのだ。それを尾形さんは「口説く」とも言う。

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キャッチコピーを自分事にできた瞬間

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今でこそ、一線で活躍されている尾形さんだが、入社当時はコピーライターとして何をどうすればよいか分からなかったという。何のためにキャッチコピーがあるのか理解出来ず、入社から10年の月日が過ぎていった。そんな時に、婚約指輪のキャッチコピーを作る仕事を担当することになった。当時、尾形さんは27歳。まさにその広告ターゲットのど真ん中だった。しかしながら、その頃の尾形さんは何十万円もする婚約指輪に全く興味がもてなかった。そんなものを買う意味が分からなかった。その時にフト思った。今回、私自身が婚約指輪を欲しいと思えば、このキャッチコピーは成功だろうと。いらないと考える自分が欲しいと思えば、きっと他の同じような人を口説けるに違いない。

コピーライターになって、はじめて仕事を「自分事」にできた瞬間だった。

そして、その当時「グラフ1000 0.9mm」を手に色々考え作り出したのが、
「愛された人にだけ許された指輪」というキャッチコピーだった。

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尾形さん流コピー作成手順

完成されたキャッチコピーはとても短い言葉だ。しかし、それを考え作り出すにはきっと気の遠くなるような工程があるはずだ。尾形さんが普段行っている作成の流れをお聞きしてみた。

コピーを作るためには、まず「聞く」というステップから始まる。クライアントの話を一生懸命聞いていく。相手が何を考えているのかを先入観を取り払い耳を傾ける。その際、オリエン資料と呼ばれるものが用意される。商品特長やこういう広告を作って欲しいという意図がまとめられたものだ。ただ、そのオリエン資料にはクライアントの考えがすべて言語化されているとは限らない。そこから漏れているものを話から探っていく。尾形さんは、オリエン資料から漏れている補足情報を「グラフ1000 0.9mm」で直接資料に書いていく。

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それらの情報を持ち帰り、第2ステップとして「そんなバカな!」と疑う。自分を無責任な消費者の立場に身を置き考えていくのだ。ターゲットユーザーとクライアントの目指すところには、どれくらいの距離があるかを見定めるプロセスである。概して、クライアントである企業の担当者は自社商品やサービスがとても大好きで、その素晴らしさをそのままユーザーに届けたい!と思う傾向がある。それ自体はすばらしいことだ。ただ、残念ながらその愛がズレていることがあるという。第2ステップは、そのクライアントの愛を減らさずに、ズレを補正していくのだ。

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第3ステップとして、いよいよキャッチコピーを考えていく。「グラフ1000 0.9mm+2B」を手にA4コピー用紙に書いていく。書くといってもいきなり言葉は書かないのが尾形さんスタイル。はじめに言葉を書いてしまうと、それに縛られてしまうからだ。いったん文字にしてしまうと、それ以上のものが出にくくなってしまうという。図や絵だったりマークなどイメージから入っていく。そして言葉にしていく。言葉を選ぶ際は、人に対するものだけなく、人以外に対する言葉も含めて適切なものを模索していく。

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そうした色々な言葉を書いていったA4コピー用紙は、ためずに潔くどんどん捨てていってしまうのだという。尾形さんは、そもそもノートを使っていない。とにかくA4コピー用紙に書いていくだけ。尾形さんにとって書くという行為は、何かを記録して残すという意味合いはない。ひたすら考えるという行為のために書くということなのだ。つまり、尾形さんにとって書いているその瞬間が大切なのだ。A4コピー用紙に色々と書いているのは、まだキャッチコピーが完成していない状態。その過程のメモは尾形さんにとって必要ではないため、潔く捨ててしまうという訳なのだ。

そして、いよいよキャッチコピーが出来あがったら「寝かす」というステップを必ず踏む。それは尾形さんにとって自分の作ったキャッチコピーを疑う時間でもある。はじめに書いたものは、クライアントの意向や都合のよいキャッチコピーになりがちだという。それは消費者やユーザーにとって必ずしも受け取りやすいものになっていないことが多い。そうしたことを冷静に見ていくために2〜3日寝かすのだ。

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ちなみに、ルミネの広告では、キャッチコピーを考えるのは意外なことに一番最後の工程だという。どんなイメージの広告にするかを決め、撮影を行い、写真のセレクトも終わった最後の最後にキャッチコピーを考えていくのだそうだ。

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■ 人を見るというインプット

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日々たくさんのアウトプットが求められるコピーライターという仕事。そのために尾形さんが行っているインプットは、とにかく人を見ることだそうだ。特に街中のふつうの人を見ることに力を注いでいる。ただこの時、人を見るだけではない。人を見てそこに何らかの法則性を見いだしていく。

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つい先日もジョギングをしていて、ある法則に気づいたという。尾形さんのジョギングコースには2種類の公園がある。ひとつは子供が集まる公園、そしてもうひとつはちょっとうら寂しい公園でそこにはおじいさんが何人も集まっている。2つのタイプの公園を見ていて見つけた法則は、男の子供、そしておじいさんというのは、特に目的もなくフラリと公園にやってきて、それぞれ思い思いの遊びをするのだという。男の子供は虫を探したり、おじいさんはカワセミを見に来ていたりと。これは女の子供や大人の女性ではまずあり得ないことだという。女性は予め待ち合わせ時間などを決めることが多い。日常のふとしたことから、そうした関係性みたいなものを拾い集め、尾形さんは広告に活かしている。

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最後に尾形さんにとって「グラフ1000 0.9mm」はどんな存在か、また、もし色や材質などを自由にカスタマイズできるとしたら、どんな風にしたいかをお聞きした。

「グラフ1000は人以外で一番頼りになる相棒です。仕事をしていく上では欠かすことができないものです。もし廃番ということになったら、できるだけたくさん買いだめするでしょうね。私にとって考える時に絶対欠かせない存在なんです。カスタマイズについては何もしなくていいです。このままのグラフ1000がいいです。ただ、中に入っている芯を予め2Bにしてもらえるとうれしいです(笑)。」

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土橋が注目したポイント
  • ルミネのキャッチコピーが写真撮影やデザインを経た最後の最後に書かれているというのは、驚きだった。私はてっきり一番はじめにキャッチコピーを決めて、それにあわせて撮影シーンやモデルの服装などを決めているものとばかり思っていた。完成された広告を見ると、すべての要素があまりにもピタリとはまっている。尾形さん流のはじめに言葉から考えないというまさにそのスタイルになっているのを強く感じた。尾形さんは、言葉はお金と同じような道具であると語っていた。つまり誰もが共通に使えるものだ。便利ではあるけれど、逆に言葉を先に作ってしまうと、それに縛られてしまい、先に進みづらくなる。この取材を通じて言葉の便利さと不便さを知った。  

プロフィール
尾形真理子(おがたまりこ)
株式会社 博報堂 クリエイティブディレクター/コピーライター
主な仕事に、LUMINE、資生堂、FUJITSU、キリンビール、Tiffany&Co.など。東京コピーライターズクラブ会員。TCC賞、朝日広告賞グランプリ他受賞多数。『試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。』(幻冬舎)で、小説デビュー。

「グラフ1000」商品詳細ページ

http://www.pentel.co.jp/products/automaticpencils/graph1000/

「シュタイン替芯」商品詳細ページ

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