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全ての創造は点から始まる。脳内のイメージをとにかく何かにアウトプットし始める時、最初の線一本、その起点を打つ時にこそ創造が始まる。点は方向が与えられれば線、密集すれば面となり、文字や形など様々なイメージを形成していく。点は偉大である。点から生まれた雛はやがて意志を持って一歩を踏み出し、一方で無意識に周囲にこぼれる点が新たなイメージを芽吹かせる。全ては、たった一つの点から始まるのだ。」

ぺんてる総合カタログ20192020の表紙デザインイラストコンテストで受賞されたオオジカオリさんの受賞コメントだ。この受賞作品は、無数の点が美しく描き込まれ、愛らしい鳥のフワフワとした毛並みまでもが伝わってくる。110を超える応募作品の中から見事に「ぺんてる賞」を受賞され、ぺんてる総合カタログの表紙を飾ることが決まった。オオジさんに、応募の経緯、制作上のこだわりなどについてお話を伺った。
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■ 動物に囲まれて育った子供時代

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ぺんてる賞を受賞されたイラストレーターのオオジカオリさん

現在、オオジさんは動物をモチーフにしたイラストレーターとして活躍されている。
年賀状の干支のイラストをはじめ、子供の教材など書籍の挿絵も数多く手がけている。


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今回の受賞作品にも動物を描いたオオジさん。動物を多く描かれるのには理由があるのだろうか。実は子供の頃、おじいさんがうどん屋さんを営んでいて、そこにはたくさんの鳥が飼われていた。中には当時としてはまだ珍しかったクジャクまでいたそうだ。クジャクのヒナが孵った時、それを近くでじっくり見ていたオオジさんを親だと思い込んで追いかけられるというちょっと怖い思いもしたという。ただ、オオジさんの心には動物、とりわけ鳥という存在が鮮烈に印象づけられた、そんな幼少期だった。
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その後も動物への興味は抱き続け、動物看護学校に進む。卒業後、動物関連の就職先が地元にあまりなく、雑貨店で働いていた。結婚・出産を経てそれまで趣味で描きためていた動物の絵をホームページで発表し、イラストの仕事が始まった。

■ 
世の中には輪郭線はない

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オオジさんが絵を描く上でこだわっていることがある。それは、ものの輪郭線を描かないことだ。オオジさんは「現実世界に線なんて存在しない」という想いが強い。全てのものは塊としての存在はたしかにそこにあるが、その境界線はないと考えていたという。動物看護学校時代に動物の体の構造を知るという目的でデッサンを描く授業があった。その時も動物のアウトラインを描くことにどうしても抵抗があったという。子供の頃に体験した鳥のフワフワとした感触をどうしたら絵で伝えられるだろうかと考え抜き、その後辿り着いたのが「点で描く」という手法だった。様々な点の集合体によってひとつのものを描きだしていく方がキッチリとした線で描くよりオオジさんにとってはとても自然に感じられた。


■ 応募のきっかけは「エナージェル インフリー」が欲しくて
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今回のデザインコンテストではエントリーすると
もれなくぺんてる「エナージェル インフリー」5色セットがおくられた

そもそも、今回はどんなきっかけでイラストコンテストに応募されたのだろうか?

「はじめは、エナージェル インフリー欲しさに応募したんです。クリエーター向けのメルマガでぺんてるさんのイラストコンテストを知りました。素敵なペンがもらえるということでまず応募しました。実を言いますと、それまで『エナージェル インフリー』というペンのことを全く知りませんでした」

意外にもはじめのきっかけは「エナージェル インフリー」に惹かれてということだったという。しかも「インフリー」のことをご存じなかった。

「すぐにペンが送られてきました。インクの色もカラフルで、書いてみるととってもなめらかですっかり気に入りました。ペンをもらえてうれしかったと同時に、もらったからには作品をちゃんと描いて提出しなければ!というプレッシャーも感じ始めました(笑)」

仕事のイラスト制作の締め切りが迫る忙しい中、時間を見つけて応募作品にとりかかったという。


■ 文字から書きはじめる創作スタイル
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「エナージェルインフリー」5色全てを使い描かれている

実は普段のオオジさんのイラスト制作はパソコンを使ってデジタルペンで行われている。ぺんてる総合カタログのイラストコンテストでは「エナージェル インフリー」で描くことが条件となっていた。久しぶりにペンを持ち、やり直しのきかない緊張感を味わったという。

オオジさんのイラスト制作スタイルは、いきなり絵を描かない。まずは文字を書くことから始める。2mm芯ホルダーやシャープペンを手にして、テーマやそのテーマをかみ砕いたキーワードを文字で書き出していく。はじめは文字で発想を広げていくのだ。

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普段創作活動に愛用しているぺんてる「グラフギア500」
ほどよい重みが気に入っているという

今回のイラストコンテストで与えられたテーマは「創造のカオス」、「発想の起点」、「アイデアの加速」だった。それらを書き出しつつ、発想を膨らませていく中で「起点」というキーワードに注目した。ご自分の描画スタイルでもある「点」をコンセプトにしようと決めた。そして、モチーフも日頃から描き続けている鳥、中でも縁起のよい「幸せの青い鳥」に決めていった。

白い紙に向かい、これくらいの大きさで描こうという「アタリ」をつける。この時にもシャープペンなどで描いてく。ただこの段階ではあまり細かく描かない。あくまでもざっくりとしたイメージを捉えていく。そして、いよいよ点描がスタートする。

「はじめは目から描き始めます。目というものは、作品を見た時に一番印象的なところだからです」

5色の「エナージェル インフリー」を持ちかえ次々に点を描いていく。オオジさん曰く、一般的に点描をされる方は針のようなペン先を持つ製図ペンを使うことが多いという。一定の点が描けるからなのだろう。「エナージェル インフリー」ははたして点描に適していたのだろうか?

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オオジさんは点の密度に強弱をつけていくことに特にこだわっている

「とても描きやすかったです。なめらかにインクが出るのでかすれこともなく、逆に滲むことなくスムーズに描けました。今回はボール径が0.5mmだけで描きましたが、力の入れ具合で点の大きさも調整できました。できれば、もっと細かい点も描きたかったのでより細いペン先でも試してみたかったですね」

たしかに受賞作品を見ると、色とりどりの無数の点は微妙にその大きさが違う。これだけの作品なので、さぞ時間がかかっただろうと思ったが、なんと制作時間はわずか2時間ほどだったという。

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オオジさんは受賞できるなんて全く思っていなかったと当時を振り返る。素敵なペンを送って頂いたのでちゃんと描かなければという気持ちが強かったという。受賞メールが届いた時に、これはきっと何かの間違いで、しばらくしたら間違いでしたという訂正のメールが届くに違いない!と思い、すぐには返信をしなかったほどだという。

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最後に今後についてお聞きしてみた。

「これからも動物など色んな生き物を中心に描き続けていきます。たとえば、虫を苦手に感じる女性は多いと思います。そんな虫たちにも魅力があるんです。そうしたことを感じてもらえるイラストを描き続けていきたいと思います」

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土橋が注目したポイント
  • 「全ての創造は点から始まる」という言葉は、とても衝撃的だった。私はふだん点を描いているなんて全く意識していなかったが、文字にせよ図にせよ、確かにすべては点から始まっている。点というものの奥深さを知った。そして輪郭線は存在しないというのもなるほどと感じた。全てのものはアウトラインはまっすぐではなく細かな凸凹がある。それを点で表現するというのは、実に納得感があるとオオジさんの話をお聞きしてつくづく感じた。
数々の描画材を作り出しているぺんてる。今回の「エナージェル インフリー」は描画材というよりも仕事ペンである。オオジさんの受賞作品を目の当たりにして「エナージェル インフリー」の思わぬ表現力にも驚かされた。

プロフィール
オオジカオリ
兵庫県豊岡市在住。
動物看護専門学校を卒業、キャラクター雑貨店勤務、WEB雑貨店勤務を経て、退職、その後2007年よりイラストの仕事をするようになり、現在に至る。
絵本・幼児向け教材イラスト/年賀状・グリーティングカードイラスト/ゲームアイテムイラスト/スマホ待受イラストなどを手がける。
ホームページ:http://www.oojikaori.com
ツイッター:https://twitter.com/ojikaori

「エナージェル インフリー」商品詳細ページ
http://www.pentel.co.jp/products/ballpointpens/gelink/energel_infree/

後編では、「エナージェル インフリー」の開発秘話などについてご紹介していきます。